劇場◆第五章◆01
『魔導士なのにマナを使わない様躾られていますから、この子は全く使えませんよ〜。』
そんな売り文句を面白がった変わり者が私を買う。1人目は私をおもちゃにして遊び、飽きたらまた売られた。2人目は殺人鬼で、トドメはいつも私にやらせた。3人目は、テアトルムでも有名な暗殺者だった。
仕事では生き物を殺してばかりだから、家では生き物を飼ってみようと思ったらしい。マナが使えない魔導士なら、尚更哀れで世話を焼く事になるだろうと。
この暗殺者は整った顔立ちで、程々に女遊びを嗜み生きていた。私にはよく分からない仕事をやってよく分からない金額の収入を得ているらしい。
◆
そんな日々に刺激を求めていたところ、仕事の関係で訪れた奴隷売り場で高額に取引されていた娘に興味を持つ。
その娘は魔導士でありながらマナが貧弱だった。魔導士はマナが無いと死ぬ。命を繋ぐ程度のマナしか持っていなかった。
奴隷商人の話によると、幼い頃に育てた者がマナを極力抜き続けたらしく、一定以上のマナに身体が耐えられないまま育ったらしい。
😈マナを持たない魔導士がどうやって生きてく?いや、奴隷に生き方なんて関係ないか…。ふむ、だが暇だし…買ってみるか。
◆
👤あの奴隷をどこで買ったか?そんなん教えられる訳ないじゃないですか。
😈いくらだ?
👤へ?
😈情報料だよ。
👤いや、いくらヴィライザさんでもこればっかりは…。私の命に関わるもんで。
😈へぇ…じゃあその命、今から潰しちゃおっか♪
👤ひっぃ〜
◆
😈ミケ。俺は仕事だから飯はメイドに言えよ。
🌀ミケじゃねーから。
😈るっせ。
バチッ
🌀いってー!!!!
暗殺者は意外に開放的だった。首輪だけつけて後は監禁するでもなく自由。ただし、暗殺者が喚べば勝手に召喚させられるという仕組みである。これは魔導士が使い魔を喚ぶ時と同じ方法。つまり暗殺者にとって娘はペットと同様なのである。
娘は自由な時間は図書館に入り浸った。マナや魔導について思い当たる節を探した。
😈今日はどこに行ってきたんだ?
🌀中央図書館
😈何お勉強したの?
🌀魔族の中でも悪魔は底辺だって。
😈お前ホント喧嘩売るの上手。
そう言って悪魔は、寝そべっていた娘の上に乗っかる。
🌀ぐあっ!!どけ、重い…うぐぐ、、
チュ…ピチャ…
🌀はっ!?やめろ!やめろやめろー!
チュ、チュ…
🌀ん、やだやだやだ気持ち悪っ!!
😈お前ぇなんでそんな感じないんだよ。
🌀感じないようにしてるから。
😈なんだそれ。感じずにはいられない体にしてやろうか?
🌀遠慮しますっ!
😈てかさ、気づいたんだけど、お前…ココ
🌀ん!
😈弱いよな。
🌀やめろっ!!
😈なんで??
🌀やだぁ、んん、む…ず、むず
😈おまたムズムズする?
🌀う、るさい…
😈マナをへそから注いだからへそが敏感になっちゃったんでしょ?うけるわぁ
🌀いっ!?やめろ触るなっ!
😈なんでぇ?気持ちいいでしょココ。
🌀ぃ、やめろっ…
ん。チュ、チュッ
🌀ぐぬぬっ、だぁああああーーー!!!!
😈ん〜お前いい匂いになったなぁ。
🌀メイド共が追いかけ回すんだ!
😈俺がメイドに絶対風呂入れろって言っといたんだよ。抱えるならいい匂いに限るからなぁ〜
🌀抱き枕じゃねーわ!
◆
朝早くから悪魔に呼ばれて部屋へ行くと、悪魔の友達がいた。
悪魔の部下を鍛える為に戦闘のプロを呼んで指南してもらっているらしい。
🌀明道院、私にも教えて。
🎑おや?小さなお客さんだね。
😈これは最近飼い始めたペットだ。
🎑ペット?君は悪趣味だね。
😈褒め言葉。
🌀ねぇ明道院!
🎑あぁ、すまない、良いですよ。何を知りたいんですか?
🌀悪魔の殴り方!
🎑悪魔?はは、寝込み襲うのかな?
😈ウェルカムだな。ベットで待ってる。
🎑君は…そういう意味じゃないだろう。
🌀出来れば正面から突っ込んで殴りたい。
😈お前が突っ込むの?まぁ、俺は楽だからいいけど〜
🎑やめなさい。キミ、倒したいとは言わないんだね。
🌀いずれ倒す。まずは一発殴りたい。
😈一回平手打ちされてっけど。
🎑え?君がかい?
🌀あれはお前の魔力が入ってたからノーカンだ。
😈さいでっか。
🎑ははwいいね。じゃあキミも練習に参加するといい。
🌀ホント!?ありがとう!
🎑これから安心して眠れないね。
😈どーだかな。
◆
🚬…。
🌀やめろー!
🚬…。
🌀無言で追いかけてくるなぁー!!
明道院にはラウという息子が一人いた。
幼いラウは、娘に誘われた鬼ごっこが楽しくて、その日からずっと追いかけ続けている。
🌀師範に言いつけるぞ!
🚬…。
🌀無言やめろーーー!!
ラウは鬼ごっこよりも娘の嫌がる顔や必死な顔を見たくて追いかけている自分に気づく。
😈なんだお前、ボロボロじゃねーかw
🌀これは鬼ごっこで…
😈あー息子か?
🌀…。
😈ふーん?好きになっちゃったか?
🌀なってない!なるわけない!だってまだ一言もあいつと会話してないんだよ!?
😈一言も!?
🌀喋れないんかな…
😈いやー、明道院と喋ってんの見たことあるぜ?
◆
今日も鬼ごっこの末捕まった娘。
🌀うぅ、せめて何か言えよ…無言で追われたら誰だって逃げるんだからな!
そう言って涙を溜める娘。
ラウは不意にキスをした。
🌀…………は?
🚬好きだ。
🌀しゃ、喋った………!?
🚬(そっちか)俺と結婚してくれ。
散々嫌がらせしておいてこのクソ野郎は何を言うのかと、強烈な右ストレートを放ち逃げた。
◆
🌀ん、んん…っ、
😈…?今日は積極的だな?
🌀…今日、
😈あ?
🌀羅宇にキスされた…
😈おっついにやりやがったか息子ぉ〜
🌀…なんでキスしたんだろ。あいつも私の事ペットだと思ってるのかな。
😈は?
🌀だってお前はペットだからキスするんだろ?
😈まぁペットだからっつーか、可愛いし?
🌀可愛い?
😈俺は見てるだけだと物足りない時に、キスしたり触ったりセックスしたりしてるぜ?
🌀ペットだから?
😈いやペットじゃなくても。
🌀ふ〜ん…あと好きだって言われた。
😈直接言われてんじゃねーかwwお前鈍い通り越してアホww
🌀アホォ!?何が?好きだとキスするもの?
😈っはwその辺も無知なのか〜。まぁ飼い主としては勝手に発情されてガキこさえてこられても困るから教えとかないとなぁ〜。あ、セックスはダメだからな。
🌀好きだとセックスはダメで、キスはいい?
😈お前からするのはダメ。
🌀私からするのはダメ。されるのはいい?
😈そう。でも俺以外は基本的に拒否れ。
🌀飼い主以外は拒否する…なんで私からはダメ?
😈そりゃあお前は俺のペットだから、お前が好きになる相手は俺が決めるんだよ。
🌀ふーん?
😈ちなみにあの息子とのつがいはダメだ。あいつは明道院のクソ息子だからなぁ。面倒が多そうだ。
🌀ふーん?
◆
ある日、明道院は実家がごたついたらしく、収める為に明道院が帰る事になった。もちろんラウも一緒に。
🎑基礎は全て伝えました。毎日励み、鍛え続けなさい。
🌀はい師範…。また、会えますよね…?
🎑そうだね。お前が成長していればいずれね。
🌀はい。
ジリ…
🌀…またっ、
🎑ラウか。
🌀今日は早朝からですよ!殺気ムンムンで殺されるかと思いました!
🎑はっはっはっ、お前たち本当に仲良くなったなぁ!
🌀全然!仲良くなんかないです!
ザザッと背後へ回るラウ。それを軽く避ける娘。
(🎑2人共、本気鬼ごっこのお陰で身のこなしがグンと成長したね)
🚬今日はお前を攫うつもりで追いかける。覚悟するんだな。
🌀はっ、覚悟すんのはお前の方だよ。二度と追えなくしてやるからな!
🚬今日は…遊びじゃない。
🌀上等。
🎑30分後には出るからね。
🚬分かった!!!
🌀分かりました!!!
〜それから20分後〜
ボロボロになったラウにまたがる娘が居た。
🌀ふん!お前にひと泡吹かせるためにたくさん練習したんだぞ。驚いたか!
息を荒げながら誇らしげに言う娘。
🚬はぁ、…あぁ、凄いな。はぁ、はぁ、やはり…美しい。
🌀き、きもちわるっ!?
🚬お前と別れるのは実に寂しい。だが俺は跡を継ぐ為、親父の元を離れられない。
🌀…私は清々する。
🚬そうか、ふふ。
起き上がり息を整え、俯いたラウは見上げるように娘を見た。
🚬…最後に一つ、願いを聞いてくれないか。
🌀変なのじゃないだろうな。
🚬大丈夫だ。…目瞑ってくれ、
🌀……。
娘は少し俯きながら静かに目を瞑った。羅宇が近づくのを感じ、体に力が入る。
チュ…ちぅ……
初めて長く深いキスをした。
二人は名残惜しそうに唇を離す。娘の目には涙が溜まっていた。
🌀ラウ…行っちゃうの…?
🚬……行く。
🌀ふぅ…ぅっ、グズ…
ラウは静かに泣く娘を優しく抱きしめた。
◆
🎑最後の鬼ごっこはどっちが勝ったんだい?
🚬引き分けだ。
🎑おや、引き分けは初めてじゃないか?
🚬決着がつかなかったんだ。
🎑…そうか。決着はつけないとなぁ。
🚬…あぁ。
🎑そういえば羅宇。
🚬ん?
🎑ミケはヴィライザの奴隷なんだよ。
🚬奴隷!?あんなのびのびした奴隷初めて見る!
🎑私もそう思うよ。ペットだと言っていたからね…気に入っているだろう。簡単には奪えないだろうね。
🚬あいつはいずれ倒す。その前に家督を継ぐ。そして、迎えに行く。
娘は見送りに現れなかった。部屋に戻り、窓の外を眺めながら名前のわからない宝珠をコロコロと転がしていた。
『必ず会いに来る。
この宝珠は、約束の証だ。』
次の日、誰も追いかけて来ない。
清々する…。
誰も追いかけて来ない。
ひとりってさびしい…。
◆
金を稼ごう。あいつは自由にしてくれるけど金はくれないから自分で集める。でも集め方が分からない。
🌀ねぇお兄さん。
📖ん?
図書館受付のお兄さんは借りられていた本を確認しながら返事をする。
🌀お金ってどうやって稼ぐの?
📖金?小遣い貰ってないのか?
🌀ない。
📖ふ〜ん。じゃあバイトしたら?
🌀バイト?
📖店でバイトいりませんか?って聞いてみたら?必要なら雇ってくれるんじゃないか?
🌀お店か…
◆
🌀バイトいりませんか?
👤いや、うちは必要ないよ。
🌀バイトいりませんか?
👤間に合ってる。
🌀うーん、なかなか難しいんだな。というか、何故か相手にされてないな。見た目か?上等な服は着てないけど、こう見えて19だぞ?
🌀バイトいりませんか?
☕️バイト?バ、え?バイトしてくれんの?
🌀必要ならする。ただし、いくらで雇うかを聞きたい。
☕️あぁーーーー!!猫の手も借りたかったんだよ!この本の整理頼むっ!!
🌀わぁっ!!?
☕️これは商品ね、本!店の棚に並べてきて!ホントは分類して欲しいんだけど…とりあえず適当で良いから!店の奥にも積んである本あるからそれも並べて!
🌀お、おう…
◆
🌀本から魔力を感じるんだけど…ただの本なのかな…?ここは魔族の店なのか?てかあいつはどこに行ったんだ…
カランカラン…
🐺…おーい。ルコ〜?
シーン
🐺ルコ〜?
ジー…
奥の物陰から様子を伺う娘。
🐺うわっ!?なんだお前。勝手に奥に入るなよ。
🌀バイト中だ。店のやつは慌てて消えた。
🐺ルコか?
🌀名前は分からない。
🐺はぁ?名前分からないのに雇われるなよ。
🌀忙しなくて聞く暇が無かったんだ。倉庫の整理はひと段落した。
🐺ふーん?バイト終わり?
🌀うん、店のやつと知り合い?
🐺まぁ。
🌀じゃあこれ、メモ書いたから渡して。また来る。
🐺あっ!おいっ!!
「倉庫の整理は終わった。今日の拘束時間2時間分の給料を貰いに来る。ミケ」
🐺ミケ…猫みてーな名前だな。
◆
😈よぉ〜。今日はどこ行ってたんだ?
🌀店で働いた。
😈は?小遣い稼ぎか?
🌀そう。
😈そういえば金渡してなかったな。自分で稼ぐならいらないか?
🌀…いらない。自分でなんとかする。
😈あっそ。ホレ餌だ。
🌀餌って言うのやめろ。ガツガツッ!!
😈いくら稼いだんだぁ?
🌀分からない。店主が慌てて消えたからとりあえず働いたけど、会わずに帰ってきた。
😈ふーん?まだ金貰ってないのか?
🌀まだ。
😈どこの店?
🌀……。
😈なんだよ。
🌀聞いてどうする。阻止するのか?
😈しないよ?お前が何しようと関係ないし。
🌀なら聞くなっ。
😈ただ興味はあるな。俺のペットはどんな仕事を選ぶんだかな。
🌀奴隷からペットに変わったのか。
😈昇格だぞ。
🌀あんまり変わらん。
ご飯を食べて自室に戻る娘。
😈あ、おいっ!何処でバイトしてんだよぉー!
◆
カランカラン…
🌀あ、ねぇねぇ。
☕️おー!君はこの間バイトしてくれた子だね!🌀うん。これ、飼い主。
☕️え、飼い主?飼われてるの?
🌀そう。
😈ぶっwwwそっかここかぁ〜。え?こいつここでバイトして大丈夫なの?
☕️は、はいっ!むしろ今人手が足りなくて助かっちゃうくらいで…
😈またバイトが急にいなくなったのか?笑
☕️お察しの通りです…やはり彼方(あちら)は現世よりも魅力的な部分がおおいですから…。ヴィライザ様はバイトをお止めにいらしたのですか?
😈いんや?どこでバイトしてんのか気になったから来ただけ。こいつの場合神隠しに合ったら合ったで召喚すりゃいいからな。
☕️…ヴィライザ様程の方なら異空間からの召喚も出来てしまうのですね。
😈まぁ。そのくらいはな。
☕️という事はミケちゃんのバイトは許可いただけるんですか?
🌀いいよな?
😈あぁ。ただしお前は俺のペットだという事を忘れるんじゃねーぞ?
🌀なんだよそれ。
😈忘れなきゃいーんだよ。
🌀はぁ?まぁいいや、分かったよ。
☕️びっくりしたんですけど、この子商品の本をキチンと分類して並べてくれたんです。
😈それくらいやるだろ。
☕️違いますよぉ!うちの本は魔獣が封印されてる本なんですが、本から出る魔力を感じ取らないと分類出来ないんですよぉー!!
🌀そういえば、魔力感じた。似てるのを近くに置いただけ。
😈ふーん?自分は魔力すくねーのに。…少ないから敏感に感じ取るのかね。
☕️もー是非是非うちで働いてぇー!!私はルコ。ここのお店と、奥の旅館を切り盛りしてるの。
🌀旅館?泊まるやつ?
☕️えぇ。うちの旅館は隠れた人気スポットなのよ?ミケちゃんにはここのお店番をお願いするわね。
😈湯屋にはつけねーの?
☕️つけられませんよ!ヴィライザ様の子ですよ!?
😈俺の嫁ではねーぞ?
☕️畏れ多くてそんな事をさせられません…
🌀湯屋ってなに?風呂じゃなくて?
😈風呂で客を洗うんだよ。裸のご奉仕だ。
🌀ん?風呂に入るんだから裸なのは当たり前じゃん。
😈まぁ、何事も社会勉強だな。とりあえず働いてみたら?
🌀そのつもりだ。私はミケ(仮)。奴隷市場でこいつに買われ、今はペットとして暮らしてる。ルコさん宜しくお願いします。
☕️あら〜、奴隷市場で…
😈いや、お前そんなデリケートな部分をサラッと紹介しなくていいんだぞ?
🌀そう?でもこれしか言うことなくて。
😈無理に言わなくていーんだよ
☕️名前の仮っていうのは?
🌀こいつがちゃんとした名前をつけるまでは仮名でミケになった。名前が無いと不便だから…
☕️気に入って無いのね。ヴィライザ様ちゃんと名前考えてあげてくださいよぉ〜
🌀ねぇさっきから気になってたんだけど知り合い?なんでこいつの名前を知ってるの?
☕️知ってる知ってる!だってヴィライザ様は有名な暗殺一家よ?知らない人の方が少ないんだから。
🌀…凄いのそれ。
☕️凄いでしょー!悪魔の憧れなんだから!
🌀ふーん?
😈こいついまいち分かってねーんだよなぁ。まぁ育ちが育ちだから色々抜けてんだよな。
☕️まぁ。
😈はっ、その分俺が教え込んでやるよ。
🌀お前色に染めるのか?…うざ…
😈お前…
🌀ぎゃーーーーーーーーー!!!!?
◆
😈そういやぁさ、稼いだ金はどーすんだ?
🌀それを元手に商売をする。
😈はぁ?
🌀?金がないと困るけど、たくさん金を持ってても苦労しないだろ?
😈そりゃそうだけど。なに、金持ち目指してんの?
🌀いや、自立。
😈自立wwwペットなのにwww
🌀いーだろぉ!ずっとお前がわたしをペットにしている保証はないんだ!今まで捨てられては買われてきたんだから。
😈…お前ここにいんの不満なわけ?
娘に近づく悪魔。
🌀っ、いや。不満は無い…自由にさせてもらってるし…ちょっと…
😈ちょっと?
🌀大事にしてもらってるような錯覚はあるから…
😈錯覚wwwそこは自信もっていえやwww
🌀大事にされたことないんだもん!!
😈あーもう。大事にしてるし、けっこう気に入ってんだぞ?こんなに毎日可愛がってるのに自立したいとか言われたら、俺だって寂しいんだぜ?
🌀き、傷ついたのか?
😈そーねー、心がヒュンてなったかなぁ…風邪ひくかも。
🌀え、ど、どーしよ…
😈お前からチューしてくれたら治るよ。
🌀キスでいいのか?
😈いいよ。
🌀分かった、ん。
😈もう1回。
🌀ん、
😈もう1度…
🌀んん、…しつこ、い
ドサッ
🌀ま、あっ///
😈なに?
🌀んん、///
😈ん?
🌀さわって…
😈どこ?
🌀…しね…
😈しねしね病直せよ。
🌀痛っ!
😈やり直し。
🌀………、ミケの…ここ、さわって…ください…、ご主人さま…
😈んー、色気が足りない。
🌀…ぅぅっ、もうやらぁ〜
😈泣くなよぉ〜
🌀んあっ!?あっあぁっ!
😈ほらいけいけー
劇場◆第四章◆02
⚛️勢いで出て来ちゃった。
🌟出られてよかったな。
⚛️ん。
🌟その頑固はどうにもならないのか?
⚛️…ならないかなぁ。
🌟じゃあもっとその性格とうまく付き合っていきなよね。
⚛️…うん。
🌟…住む場所なんだけどさ。
⚛️うん?今日はとりあえずホテルかなと思ってる。
🌟ホテル?金あるの?
⚛️そーだ…ないんだった。
⚔️いたいた。ミラくん?
⚛️あ、オーナさん。
⚔️今独り言喋ってなかった?
⚛️いえ?
⚔️そうか。
⚛️オーナさんて精霊見える?
⚔️んー、見える時と見えない時があるな。認識できた精霊はいつでも見えるんだろうなと思ってる。
⚛️んん?
⚔️名前知ってるとか、顔を覚えたとか、知り合いになった精霊は見えるけど、その他は見えないって事。
⚛️へー。
⚔️ミラくんは見えるの?
⚛️…あなたと同じです。
⚔️ふーん。精霊は力の使い方を教えてくれるから助かってるんだよね。
⚛️戦闘の技術も?
⚔️いや、言い方悪かったね。マナの使い方だよ。魔導は精霊から教わる、なんて事も言うみたいだしね。君も精霊に魔導を教わってるんでしょ?
⚛️そうですね。
⚔️良かったら今度俺にも紹介してね。
⚛️本人が良いと思ったら勝手に出てくると思いますよ。
⚔️だろうね。精霊は警戒心強いからなぁ〜。
⚛️私、アカデミーには入りません。
⚔️あぁ。さっきは勝手にアカデミー入りたいみたいなんていってごめんねー。孤児院出るのが目的だったなら理由は何でもいいかなと思って。
⚛️まぁ、出れたので問題ないです。ありがとうございました。
⚔️これからどうすんの?
⚛️オーナさんは魔導師の知り合いいますか?
⚔️あぁ、アカデミー専属の魔導師がいるよ。
⚛️その人と話しがしたいです!
⚔️ん、アポとったらいいよ。1000人待ちだけどね。
⚛️せ!?
⚔️勇者御一行の一人だからねー。
⚛️あー…そうでしたか。
⚔️アカデミー生ならもっと楽に会えるけどね。
⚛️…、院長の言う通りで、私は組織に所属出来ないです。
⚔️なんで?
⚛️チームプレー無理だし、一人で行動する方が好きだから。
⚔️はははw早死にするな。
⚛️む。
⚔️いいんじゃない?選択するのは君なんだ。早死にしたいならそう言う考えでいなよ。
⚛️1日で精霊魔導をコントロールしました。他のことだって同じように
⚔️そんな甘いもんじゃないよ?ちょっと外に出ただけで危険地帯だからね。ある者は片目を失い、ある者は片腕を失い、ある者は体半分が麻痺して動かなくなった。これはまだ優しい方。精神を侵されて妖魔化して家族を殺したり、操り人形みたいに大切な人を殺させられ続ける奴もいる。人類は奴隷の対象でもあるしね。
⚛️…、
⚔️魔導が扱えるからって恐れて何もしてこないなんてことないんだよ。相手は常に理解の範疇を超えてくる。そう言うやつらへの対処は、経験とそこからくる直感だ。
⚛️…。
⚔️まぁまずそんな経験は出来ない。目の前にした瞬間に死ぬからねっ。
⚛️うん、それはそれ、死んだらそれが私の人生だったと言うことです。
⚔️ん?ふふふ、結構脅したんだけどな。
⚛️頑固だから。
⚔️きみ?
⚛️はい。
⚔️ふふ、やっぱり早死にしそうだ。これ、俺の紋章が入ったピンを渡しておく。俺はアカデミーにだいたい居る。これを見せて入っておいで。
⚛️…じゃあ、貰っておく。ありがとう。
⚔️今夜は?
⚛️ホテルに泊まる。
⚔️ホテルゥ?お金あるの?
⚛️…。
⚔️良かったらうちくるか?
⚛️え。
⚔️引かない引かない。
⚛️こ、
⚔️ん?
⚛️今夜だけ…お願いします。
⚛️なんか虚しい。
🌟これから金貯めればいいだろ。
⚛️んー。
🌟普通知り合ったばっかのやつに紋章渡さないよな。
⚛️え、これ?これなに?
🌟しらねーのか。持ち主オリジナルの紋章が入ったピンで、持ち主の弟子って意味がある。
⚛️弟子!?
🌟まぁ身内だよってのを表すような物かな。マナも含まれてるから虫除けになるんだ。
⚛️えー。そんなの渡されたらご恩返さないとじゃん。
🌟お前そんな事考えて生きてんのか。めんどくさいやつだな。
⚛️そうだよ。
🌟…友達少ないだろ。
⚛️外面は良かったから普通にいたかな。
🌟どうだか。
⚛️いいんだよそれは。清算したんだから。これからはテオとまた作っていくから。
🌟俺にも都合ってもんがあるんだけど?
⚛️それは相談ください。わがままだけ言う私じゃなんだから!
🌟そーかよ。
◆
⚔️よぉ、一回アカデミー見ておいたらどうだ?
⚛️んー、そうですね。
⚔️俺は仕事だからアカデミーには行けないけど、場所わかるよな?
⚛️はーい。
🏵わっ!
⚛️大丈夫?ごめん見えてなかった。
🏵いえいえ!僕からぶつかってしまったので、すみませんでした!
⚛️アカデミーの子?
🏵まだ入学してないです!
⚛️そうなんだ。遊びに来たの?
🏵うううん。ミラって人を探してるの。
⚛️ミラ?ハートネット?
🏵そう!知ってる!?
⚛️いや、知らないや。
🏵なんだぁ、また探さないと。
⚛️探してどうするの?
🏵アカデミーを案内したかったの。
⚛️へー。私も始めて来たから案内してもらいたいなぁ〜
🏵あ、いいよ!案内しながらミラ探そうかな!
⚛️うん。よろしくー。
🏵アカデミーは専攻に分かれていて、勇者・魔導師・戦士がある。勇者は魔導師と戦士両方の修練を積むんだ。
⚛️ふーん。誰が教えてるの?
🏵最初は勇者マルカと魔導師ヒナと戦士ガンゾと戦士バフラが教えてたよ。その教え子達が育ったから今はその人達が教えてる。初代達は相談役みたいな感じ。
⚛️へー。キミ…あ、名前なんていうの?
🏵ミズキ!
⚛️ミズキはどの専攻に入りたいの?
🏵勇者!
⚛️てことは魔導使えるの?
🏵へへ…使えないんだぁ。
⚛️あ、そうなの?
🏵だから戦士にしかなれないんだぁ。
⚛️戦闘のプロになればいいんじゃない?
🏵…うん。そうだね、
⚛️…。
🏵お姉さんは誰かとアポ取ってるの?
⚛️いや、取ってないんだよね。
🏵じゃあ案内は終わりだね!
⚛️ありがとう。助かったよ。
へへへー!!
♠️ミズキ〜、また人に迷惑を掛けてるのか?
🏵違うよ!案内してって言われたからしてたんだから!
⚛️案内をお願いしました。この子はしっかり説明してくれました。
♠️そうでしたか。よくやったな。
🏵ふふふ。僕のお父様だよ。
♠️どうも。マルカです。
⚛️は、じめまして…ぇ?お父様?
🏵うん。
⚛️ミズキくんのお父様は勇者かぁ…。
♠️アカデミーには入らないとオーナから聞いてる。見学かな?
⚛️あ、はい。実際に見てから決めようと思って。
♠️そうか。どうだった?
⚛️んー、まだよく分かりません。
🏵え、僕の説明良くなかったかな…
⚛️そういうことじゃなくて…
♠️必要性を感じなかったんだね。
⚛️…。
♠️ここが全てではないからね。納得いくものを自分で見つけていくといいよ。見つけにくい分大変だろうから、頑張りなよ。
⚛️はい、どうも。
マルカさん、ヒナさんが呼んでましたよ。
♠️分かった。じゃあ…
⚛️あのっ、石版都市に行く方法を知りませんか!?
🏵石版都市?遺跡に?
⚛️はい。行ってみたいんです。
♠️行く方法は2つある。空からか、地上からか。
⚛️2つ…
マルカさん。
⚛️どうやって!?
♠️ごめんね。時間がないからまた今度。失礼するね、ミラさん。
🏵え?ミラ?ミラハートネット??
⚛️テオ、2つの方法思い当たる?
🌟んー、翼生やして飛ぶか、転移魔法陣描いて行くか…かなぁ。
⚛️転移魔法陣は2つの魔法陣が繋がってないと意味ないよね?
🌟だな。
⚛️えーじゃあ両方共今すぐは無理じゃん。
🌟時間かければ可能なのか?
⚛️不可能はないでしょ。
🌟ふっ。期待してまーす。
⚔️お。アカデミー来たのか。どうだった?
⚛️違う感じだった。
⚔️ははっ。違うかぁー!そんなお前にいい話を持ってきたぜ?
⚛️なに?
⚔️アカデミーみたいなところは他にもある。
⚛️え!?なんで隠してたの?
⚔️隠してたわけじゃないんだが、ここから離れたところにあるからな。
⚛️どこにあるの?
⚔️遊間だ。
◆
遊間を目指して歩くとすぐに妖魔が襲ってきた。身につけたばかりの魔導で負傷しつつもなんとか回避する。
負傷した傷が激しく痛みだし、膝を付く。
😈その痛み、とってあげようか?
だれ!?
😈君の名前を教えて?
人など見当たらなかった森の中で突然現れた人物。柔らかい笑顔を向けてくる男の後ろには怪しい気配が感じられた。
男の申し出を断り続けると、みるみるうちに表情を変え、更に痛みを与えてきた。
😈痛みだけじゃつまらないから、絶望的な気持ちにさせてあげる。どうやらキミは凄まじい呪いにかけられてるね。
呪い?
😈心臓に何か刺さってる。そのままにしてると死んじゃうね。
テオの手助けもあって男を追い払うことができたが、悪魔の言葉に動揺を隠せないミラ。
フラつきながら湖に近づく。痛む傷口を湖に浸す。
不思議そうな顔でミズキを眺める妖精。
🧚♀️死んじゃうの?
え?
突然話しかけられた相手が小さくて驚くミラだが、食いつき気味で質問してくる妖精にノせられて答える。
🧚♀️なんで死んじゃうの?
知らないよ。勝手に言ってただけだし。
🧚♀️心臓見せて見せて?
は!?やだよ!
🧚♀️見るだけ見るだけ!
妖精はミラの胸に耳を当てた。
🧚♀️…金の…針…
金の針?
川に落ちた時のことを思い出すミラ。
🧚♀️見たことあるよ。ね?
🧚♂️あるある。
え?どこで?
🧚♀️石版!
🧚♂️遺跡!
石版遺跡?
🌟石版都市じゃないか?
🧚♀️🧚♂️そうそれ!
テオ知ってるの?
🌟1000年前に滅んだ遺跡だ。空に浮いていたらしい。
空に?
🧚♀️石版都市の天帝にも刺さってたよ。
🧚♂️覚えてる覚えてる。
なるほど…。石版都市行きたい。
🧚♀️それよりテアトルムだよ。
🧚♂️そっちの方が早いよ
🌟テアトルムってなんだ?
🧚♀️遊間にある学園!
学園?アカデミー?
🧚♂️違うよ。学園!
🌟どう違うんだよ。
🧚♀️全く違うよねー
🧚♂️見てみればいいじゃんねー!
行き方知ってる?
🧚♀️知ってる?「知らなぁい」「あっち!」
妖精に引っ張られて辿り着いたのは小さな洞窟だった。
「ここ?…あれ?」
気づくと妖精は消えていた。
薄暗い森の中、急に淋しさがこみ上げてくる。この洞窟の先に何があるのか…ここでじっとしているくらいなら洞窟に入った方が…
忘れていた傷がまたズキズキ痛み始める。
「どうした?」
緑色のとんがり帽子を被ったドワーフに話しかけられた。
「そこに入らないならどいとくれ。ワシそこに入りたいんだ」
「この洞窟はどこに繋がっているんですか!?」
「知らんね。君の望むところに出るじゃろ。」
そう言って洞窟に入って行ったドワーフ。
「チミ、この洞窟初めて?」
行ってしまったかと思えばヒョイと顔を出してくれた。
「初めて…ていうか、森で迷っちゃって…ッ」
「怪我をしてるのかい?どれ、見せてみ。」
懐から薬のような物を出して塗ってくれた。
「少しすれば痛みは引くじゃろ。ただし、痛み止めじゃからな、医者に診てもらえよ。」
「ありがとう。」
「うん。じゃあな。」
「あ!あのっ」
「そうじゃ、チミ、この洞窟初めて?」
「はぁっ、はい!初めてです。」
「そうか、この洞窟はな、本来なら存在しない曖昧なものなんじゃよ。簡単には絶対現れぬ。チミのような魔導師やワシみたいなもんが呼び出せるんじゃ。」
「魔導師…」
「そうじゃ。洞窟は望む場所に繋がる。だからワシが入ったらちょっと間を置いて入れよ。ワシの望む所に出ちまうからな。」
「分かった。ドワーフさんありがとう」
「いいよ。チミは素直でいい子だからさ、お節介したくなっちまった。ははは」
笑い声が洞窟の奥に消えていく。
痛みが引いてきた…、淋しさもちょっと無くなった…
「そろそろ、いいかな。」
意外と狭いな…
最初は歩いていたのに、中腰になりついには四つん這いで洞窟を進んでいる。
「もしかしてドワーフさんの所に繋がってない?」
ハッとして止まるミラ。
「行きたい所、行きたい所、遊間遊間…テアトルムテアトルム…」
目を瞑り、言葉に出して念じてみる。
すると、何かに引っ張られるような、呼ばれるような感覚がした。
「…よし。」
再度気を引き締めて洞窟の先を目指す。
「何にも見えない。」
行き先を定めてから10分程して何も見えないくらい真っ暗になった。行くか戻るかの道しかない洞窟を、ひたすら暗闇に向かって進み続けている。
「いでっ!…ッた~、何かに当たった!これは…」
洞窟の端に辿り着くと、そこにはドアのようなものがあった。
「ドアのぶは無いのか…。どうしよう。……」
トントン
おもむろにドアをノックしてみる。
「すみませーん。テアトルムに行きたいんです。開けてくださーい。」
トントン トントン
ガチャ
「開いた!?」
「おや?見ない顔だね。いや、誰の顔も覚えてないんだけどねっあはははは」
茶色いローブを着た鼻の長い、元い鼻の高い白黒の毛深い生き物が豪快な笑い声で出迎えてくれた。
「さぁ、遊間へようこそ。少女。」
「遊間…」
優しい色の家々、活気のある市場、美しく吹き出す噴水の周りには陽気に歌う者や楽しく語らう者達…。
「わぁ…」
「すげぇだろ?ありゃ王国さ。国王様が居るんだぜ?そりゃ当たり前か!あはははは」
振り返ると洞窟の入り口は無くなっていた。
「あぁ、通路は閉じちまったぜ?後がつっかえちまうからなぁ。お、キタキタ!」
ミラが出てきた扉とは違う、立派な装飾が施された扉が現れた。
「よぅ。見ない顔だね。いやっはっはっはっ!!」
「あの、なんで私のと扉の形が違うの?」
「じゃあなー。あ?そりゃ同じ扉なんていっこもねーさ。て少女、マジで新参者かい。」
「うん。初めて来たんだ。」
「そーかいそーかい!ようこそ!あんた見たところ魔導師だね?魔導師があんな小さい扉から出てくんのは初めてだ。はっはっはっ」
「さっきの豪華な扉から出てくるの?」
「一概にそうとは言えねーがな。あんた、心細かったんじゃねーのか?異次通路は感情に反応するからよ。」
「感情に?」
「おう。通路を通ってる時どんな気持ちだった?」
「…森で迷ったり、悪魔にあったり…。テアトルムに行きたかったんだけど…確かに心細かったかも…」
あん?テアトルム探してんのか?それならこっから北にずっと進めば見えてくるぜ。
そうなんだ!ありがとう!
やぁ、サシュレ。差し入れを持ってきたよ。
白髪に綺麗な紫色のメッシュがかかった猫目の女性がドアを開けてくれた生き物に話しかけた。
よぉ!いつもあんがとなぁ~!はっはっはっ!
おや、新しい子?
「あ、こんにちは。
「こんにちは。ミナトです。
ミラです。
「ちょーどいーじゃねーの。そいつテアトルムに行きたいんだとよ。連れてってやったらどうだ。
「そうなの?
「はい。テアトルムに行きたくて。
「いいよ。入園資格は?
「えっと、たとえば?お金?
「少女ぉ~テアトルムの入園資格は金じゃねーんだよぉ~そんなことも知らねーで来たのかぁ?
「え?
マナだよマーナ!
あ、それならあります!いくらでも!
いくらでもはねーだろ。
なら大丈夫。じゃあ行こっか。サシュレまた何か持ってくるね。
おー!さんきゅーなぁ~
サシュレさん、ありがとうございます!
おー、頑張れよー。
どこでテアトルムの事を?
森で迷った時に、妖精から聞きました。学園だってことしか分からなかったけど。
テアトルムはねぇ~魔導・実技・ライフスキルを身に付ける為の学園なんだよ。身に付ける事が目的じゃない子もいるけど~…一種の保護施設かな?
孤児院みたいにですか?
んー、子どもだけじゃないかな。
はぁ、…?
もし君がテアトルムで暮らしたいなら歓迎だよ。その時は入学金が必要だけど。
…分かりました。
話しながら歩いていると、一軒の店の前に着いた。
さて、テアトルムに入る前にこの水晶を手に持って。
ここがテアトルムですか?
ここは入り口だよ。エントランス。
エントランス…?
はいコレ。
はい。
ここにマナを注いでみて。
はい!
半透明の水晶の中に黒と赤の渦が発生した。その中に金色の光何かもあった。
女性はミラを見つめて静かに微笑んでいる。
ど、どうですか?
「ふふ、良い色だね。キミはこれから大変だろうけど、どんな事があっても諦めないで進みな。
「え?
「さぁ、ここがテアトルムだよ!
わぁー!……ん?
赤い布がいくつも垂れ下がった門をくぐり、店に入ると普通の店だった。
この先この先。
いらっしゃーい。ミナトまた新しい子?
うん、ミラちゃん。よくしてやってね。
あいよー。
よ、よろしくお願いします。
俺はルコ!よろしくぅ~今仕事中だからさ、後で顔だしてくれたら案内するよ!
ありがとうございます!
その奥がテアトルムだよ。
店の入り口と同じ門に、今度は黒い布がいくつもかかっていた。その門をくぐると、
おぉー!!
赤と濃い紫を基調とした中華風の建物が連なっていた。遠くには見張り台のような高い建物や、王様が住んでいそうな立派な建物まで。
こっちだよ。まずは在籍カードを作ろう。
あ、えっと、その前に。
その前に?
学園長さん?ですかね、そういう人に挨拶しないと…ですよね?
あぁ。大丈夫だよ僕がそれみたいなもんだから。
えっ!?だから色々…えぇ!?
ふふ、さぁこっちだよぉ~。
思えばここまで来るのに色々あった。
いきなり死にかけたと思ったら魔導が使えるようになって、15年間一緒に過ごした家族と別れて旅に出て、初っ端から森で迷子になる。
性格の悪い嫌味な笑顔の悪魔に攻撃されるわ、気分悪くされるわで最悪だった。
でも可愛い妖精達に元気を貰って、小人さんに親切にして貰って、遊間でも色んな人に助けて貰った……さっきミナトさんも言ってた。これからが大変なんだ。頑張ろう。
◆
遊間は湖に囲まれた土地に在り、
東西に分かれた道と繋がっている。
東へ行くと悪魔の巣食う迷いの森がある。
西へ行くとイバラの生い茂る地獄道がある。
容易ではないが通れなくもない。
命を1つや2つ落とすだけだ。
大変な思いをせずとも遊間を通れば簡単に北へ進める。通行証があればただ通り過ぎることが出来る。しかし遊間には珍しい特産品や湯屋がある。通り過ぎるだけでは後悔する。
先生。
ん?新入生のミラ。なんだ?
🧐説明口調だ。
私はサシュレさんが待つ場所に異空間移動してたどり着いたらしいのですが、それはどういうことなんですか?
あぁ。お前は異空間の入り口を見つけられたんだな。
🙄異空間の入り口?
通常のルートは先程説明した通りで、他の道といえば空を行くか湖を通るかだ。しかし、魔導師は別の方法を取ることもできる。それが異空間移動だ。
🧐ミラさんに出来たという事は僕達にも出来るという事ですか?
出来る。異空間移動は体力とマナが多く必要だ。よって、移動中に体力かマナどちらかが切れれば異空間に取り残されてしまう。
えぇーー!?
帰れるんですか?
帰れない。異空間は無数に存在する不安定なものだ。それを保持し続けるためにマナが必要で、安定させるために体力が必要なんだ。
🙄ミラさんよく無事でしたね。
🥴それだけマナも体力もあるんだねぇ。
実は、最初は身長より大きな洞窟だったのに、先に進むにつれて通路が狭くなっていったんです。最後はハイハイで進みました…。
それは体力かマナどちらかが減っていったからだな。
なるほど…サシュレさんには心細かったんだろって言われました。
暗い顔だったんじゃないか?体力をつけた方が良さそうだな。
はい!
だがまずは異空間移動する為の入り口を探し当てる技も必要になってくる。ミラは自分で探し当てたのか?
偶然洞窟を見つけたんですが、私より先にドワーフさんが通りました。
なるほどな。ドワーフは鉱石を採掘する為に様々な場所へ訪れる。ドワーフが開けた異空間の入り口だったんだろう。
へ~。
お前達はまだ入り口を作り出す技術もマナも体力もないから、興味本位で異空間移動しないように。死ぬからな。
ひぃ…!
異空間移動については大丈夫か?
は~い!
よーし続けるぞぉ~
遊間には元奴隷や人類など様々な種族がたくさんいる。戦闘能力の無い種族には生き辛いのが現実だから、そういう種族にとって遊間は安心できる場所となっている。
ちなみに私は緋奈ひな族だ。ハカセは博識な好能こうの族だな。
🧐はい!
チョウノは飛流ひりゅう族か。
🥴そうです!
🙄チョウノ飛べるの?
🥴まだ飛べないよ。飛ぶ為にここに来たんだぁ。
情報収集は基本だ。テアトルムには何の種族がいるのか各々で調べるように。ただし、無闇に話をするのは危険だから、気をつけるように。
はーい。
テアトルムを管理しているのはDiosa。遊間も管理している。
ミナトさんが次々と客を招き入れたことで住民が増えた。
しかしDiosaもミナトさんも何もしてくれなかったので、住民は生きる為に知恵を絞った。
ミナトさんの魔導具を量産する者が出て魔導具が特産品になった。
ミナトさんの本棚にあった薬草図鑑を読み、様々な薬湯を作り出す者が出て湯屋が出来た。
これといって特技の無いものは自らを商品にし出し、湯女が現れた。
そうして出来たのが遊間である。
贅沢は出来ないが最低限の生活が出来るようになった。
これが遊間の成り立ちだ。お前たちがここで学べるのも、Diosaが受け入れてくれたことに起因する。感謝の気持ちを持ち、自分に何が出来るのかを探して生きるように。
はーい。
先生、遊間の外には何があるんですか?
カーンカーンカーン🔔
時間だ。それについてはまた明日にしよう。授業は終いだ。
ありがとうございました。
はい。ありがとうございました。
🧐セイ先生
どうした?
🧐Diosaは何で人類達を受け入れたのでしょうか。
気まぐれだろう。受け入れた訳ではなく、勝手に入り込んできたまま放置していたと聞いた。
🧐はぁ…冷たいんだか優しいんだか分からないですね。
Diosaは気ままだ。振り回されないように心を広く保つといい。
🧐はい。