Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

逢魔ヶ島◆06

 

生まれた時から白いお部屋にいた。

食べ物は美味しいし、

可愛いぬいぐるみもあるし、

何より優しい家族がいた。

 


お父様は白いお部屋の外から色々なものを持ってきて遊んでくれた。

お兄様は白いお部屋の外がどれほど危険な場所なのかを教えてくれた。

お父様は安全なここに居ることが正しいことなんだと教えてくれた。

お兄様はあったかい笑顔で優しくギュッてしてくれた。

 


私はそんなお父様とお兄様が大好き。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

この人は私の大好きなお父様とお兄様を奪った人。

 


ずっと座ってるのはダメだっていう。

ずっと笑ってちゃダメだっていう。

怖い顔で私をみて大きな声で怒鳴っていう。

着替えもお片付けも自分でやれっていう。

食べ物は自分で準備しろっていう。

白いお部屋は良くないっていう。

お父様とお兄様は間違いだっていう。

痛いこともやらないとダメっていう。

息ができなくなっても息をしないとダメっていう。

目から涙が出てもおかしくないっていう。

胸がぎゅうってなるのはおかしくないっていう。

顔がくしゃっとなることはおかしくないっていう。

楽しいと嬉しいは自分で見つけて良いっていう。

好きな場所に歩いて行って良いっていう。

怖くなったら一緒に行ってくれるっていう。

お父様とお兄様は本当の家族じゃないっていう。

本当の家族はお父様に奪われちゃってたんだって。

 


◇◆◇

 


雅己:と、いうわけで。新しく島に来た愛瞳(まなみ)だ。お前達なかよくしてやれよ〜。

サクラ:愛瞳ちゃんは生まれてからずっとお家の中で過ごしてきたから、知らないことがたくさんあります。みんなが教えてあげてね。

 


子ども達)はぁーい!

子ども)まなみちゃんあっちで遊ぼう!!

👁…うん

 

 

 

雅己:子どもは打ち解けんの早いなぁ。

サクラ:うん。子どもは子どもの中で過ごすのが一番だわ。

雅己:…さっきの話だが、愛瞳は厄災の子だ。

サクラ:うん。

雅己:力を制御する訓練の為に甘戯かキウレが迎えにくる。それ以外が来たら警戒してくれ。

フジ:え…どういうことですか?

雅己:念の為だ。不安を煽って申し訳ないが、厄災の子は何を秘めているか分からない。どっかの変態に目をつけられるか、戦の道具にさせられるか。

サクラ:そういうこと…

Sato:愛瞳さんは力を制御出来ていますか?

雅己:いや、まだどんな能力なのか分からねーんだ。だからSatoと藤にはそのあたり気にかけてもらいたい。

フジ:私で大丈夫でしょうか、

雅己:甘戯と訓練したんだろ?

フジ:それは昔の話で!最近は訓練という様な事は…

サクラ:いや藤ちゃん。片手に米俵、片手に野菜の束担ぐ人が何を言ってるのよ。

雅己:甘戯が藤はどんどん怪力になってるって言ってたよ?

フジ:あいつ…

雅己:暴走を止めろって話じゃないよ。力加減が分からずに殴っちまうとか壁を壊すとか、そんなところだろうと思うんだが。

Sato:愛瞳さん本人の安全と、他の子ども達の安全確保が大切です。それらを第一に考え、優先されることを臨機応変に考えましょう。

サクラ:いざとなれば道向こうに忍雅衆も螺雅達もいるから、すぐ駆けつけてくれるわ。気楽に気楽に。

フジ:はいぃ。頑張ります!

雅己:子どもの中で過ごすってんならより意識して安全管理しねーと。他の子どもらも危ねぇ。

サクラ:そうね。…どちらにせよ!子ども達を守ることに変わりはないから、何人増えようが一緒よ。

雅己:うん。何かあれば言ってくれ。

サクラ:ありがとう!

弥五兵衛:雅己さん。

雅己:お。弥五兵衛さん、どうも。

弥:こんにちは。何かあれば言ってくれといいましたか?

雅己:おう!何かあるか?

弥:それがね、子ども達がでかくなってきて部屋がボロボロなんだよ。なんとか建て替えか増築できないもんかねぇ?

サクラ:ちょっと力が有り余ってる感じありますよね。

弥:いやまったく。元気なのは良い事なんだけどねぇ。

雅己:ふーん?子どもらがやりたがるなら繁華街か明道院へ奉公に出せばどうだ?

サクラ:え!?

雅己:でっかいやつは12歳だろ?15のやつは月影にも入ったしな。

弥:たしかに。島全体で子どもを育てりゃいいってもんだな。ミルスさんに相談してみるか。

Sato:もはや独立ですね。

サクラ:ひとり立ちって言ってぇ、、、

フジ:まずは本人が望むか聞いてみないと。

弥:決まりにしちまった方が良ーよーこういうのは。可愛い子には旅をさせねーとな。

サクラ:先に言っておくけど私そっち側無理だから。子ども達みんな可愛いから甘やかす以外の選択肢無い。

フジ:私も…厳しくするのは苦手で、、、Satoさんの飴と鞭が頼りです…。

Sato:お任せください。

雅己:はは、頼もしい母親達だ。