Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

ディオーラ◆01

テアトルムでは稀に、天空から大きな手が現れ生物を一握りして帰っていく。連れて行かれた者が帰る事は無く、その安否を知る術はなかった。どんな攻撃にも反応を示さない為、地上の者達はその巨手を恐れていた……

 
黄泉を統率していた棟梁が巨手に潰された。低級種は棟梁によって統率されるが、それが無ければ無差別に争いを起こしていく。父親の意志を継いだ棟梁の息子、ハーデクヌーズは未熟ながらも再び外来種を統率すべく、側近の力を借りて動き始めていた。
 

 
棟梁が潰されてから数年が経った頃、一人の魔導士により中つ国・ディオーラの平和が脅かされようとしていた…。
 
魔導士は何の前触れも無くディオーラに現れた。強大な魔導を操るその男は、特有の残忍さと冷酷さを持っていた。前黄泉棟梁のお気に入り魔導士、ダマラ・ナルガ。


ダマラは邪悪な魔導を垂れ流しながら「最近退屈なんだよね。」と一言残して煙のように消えた。テオバルドはすぐに近衛師団に後を負わせたが捕まえられず、現統領のハーデクヌーズと連絡を取った。
 
ダマラは標的をいたぶる趣味がある。以前は前棟梁から与えられた魔人をいたぶっていたが、棟梁が巨手に潰されてから数日して魔人は死んでしまった。ハーデクヌーズは、ダマラの能力を買っていたが扱いは心得ておらず、黄泉統一に手間取っている間に城を離れていたダマラに、気づいていなかった。ハーデクヌーズにちょっかいは出してもおねだりはしなかったダマラは自ら標的を探しに出ていた。
 
ダマラがディオーラの城を出て数時間後、城下町で買い物をしていた王子がダマラによって連れ去られた事がテオバルドへ伝わる。
テオバルドは怒りを抑えきれず勢いのままに、ダマラ討伐と王子奪還へ向かうが、冷静な判断を欠いて失敗に終わる。
 
ディオーラでは、王国を護る近衛師団と国民を護る聖騎士団が編成されている。近衛師団は王国護衛と巨手についての調査を行い、聖騎士団は国民の安全を護ると共に労働の機会を作っている。
ダマラ討伐に近衛師団だけでなく、聖騎士団も数団体出撃していたが、聖騎士団の実践経験が少ない若者ばかりが犠牲になった。
ダマラ討伐で大きな損失を出し、王子も取り返せなかった国王へ不満を募らせた聖騎士や国民は城を囲んでデモを行った。息子を殺されたとはいえ一国の王としての判断は正しかったのかと問う国民へ、テオバルドは答えることが出来なかった。
そんな中、城の前にある広場中央の噴水に登り、王の思いと自分の気持ちを叫んだのは近衛師団・副団長のディルムだった。ディルムと王子は幼馴染だった。ディルムの言葉を受け、再びテオバルドが国民へ志を伝えて団結へと導いた。
 
近衛師団と聖騎士団を再編成しつつ、今後の課題を話し合うテオバルドと近衛師団長ガルディモ、副団長ディルム、聖騎士団長シャルグ、副団長ジャム。
ダマラを倒せない今、討伐してもらえる者を探すか、ダマラに標的となるモノを与えてディオーラから興味を逸らすか。その標的を早急に探し出すべく、テオバルドは捜索隊を編成し、テアトルムでも血気盛んな者たちの国、スレイプニルへ向かわせた。