Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

ある団体のこと

小さな子どもが息を切らして走っている。

 


助けてください!

 


子どもが叫び声かけたのは、果物や木のみがいっぱい入った箱や袋を運ぼうとしている数名。

 


子どもの剣幕に只事ではないと判断し、その場にいた者達は耳を傾けた。

 


子どもによると、

自分の村と近くの村が、対立しており長く戦闘が続いているのだという。

保護国に助けを求めたが、他に戦争中なので手を回す余力がないと言われてしまった。そんな中、相手側の村はその保護国から援助を得て数日後には村を攻めてくるとの情報を得た。万事休すかというところ、逢魔時城下のことを知った。お礼はするので助けて欲しい、ということだった。

 


子どもは説明を終えると、疲労からか倒れてしまった。

 


 


子どもが目を覚ますと、ベットに寝かされていた。起き上がり辺りを見回すと、1人の白髪の女性が椅子に座っていた。

 


やぁ、起きたか。

 


あ…こんにちは、た、助けてくれてありがとうございます。

 


うん、挨拶とお礼ができてすごいな。私は女将、この城下を管理してるよ。あんた、うちに助けを求めに来たんだって?

 


え!あ、はいっ!そうです!どうか助けてください。

 


いいよ。それで、あんたはうちに何をしてくれるんだい?

 


僕にできることなら、お礼はなんだってします!!

 


だから何してくれるの?うちが動いたとして、どんな利益があるか教えてくれ。

 


り、りえき…?

 


無いなら動く意味はないなぁ。今回の事は無かったことにしてくれ。

 


そんなっ!困ります!数日後には村が無くなってしまうかもしれないのに!!

 


んー、でも君はうちに利益があるかどうか言えないんだろ?そもそもなんで君みたいな小さな子どもがくるんだい?村長やお偉い方がくればよかったんじゃないの?

 


そ、それは…大人はみんな戦いに出てるから、走ってここに辿り着けるのは…僕だけだって。

 


ふ〜ん?何も持たされなかったの?

 


あ!お金ですか!?お金ならありますよ、これくらい!

 


はははっ!うちに何人いるか知ってるか?300だぞ?そんだけの金で全員の食事が賄えると思うかい?

 


そ、それでは僕が食事を作る手伝いをします!

 


間に合ってるよ。

 


で、では農業をお伝えします!

 


それも間に合ってる。

 


えっと、えっと。

 


もうしまいかい?じゃあね、無駄足をさせたな。

 


待ってください!!!

 


…なんだ。

 


僕を売ります!!!

 


…お前を?

 


はい。僕を売ります。他の所に売るでも、奴隷にするでもお好きに使ってください。

 


こんな細っこい子どもが売れるとでも?

 


売れますよ。なんたって僕には誰にも負けない特技があります。

 


ほぅ?それは?

 


今は言えません。

 


…ふ〜ん?

 


お助けいただけたのならば、必ずご期待に応えてみせます!

 


もし私の期待に応えられなかった場合は?

 


応えられなかったら…村を焼いてください。

 


…ぷ、なんだそれ。助けてもらいに来たんじゃ無いのか?

 


そうです。僕の敵はB村で、あなたがたではありません。助けていただいた後は、女将さんの好きなように扱ってください。

 


そもそも、あんたの命と村が同等だとでも?

 


はい。僕の特技はそれだけ希少なものです。

 


ふ〜ん?いいのか?女は性奴隷、子どもは食用、男は重労働だぞ?

 


っ、…良いです。

 


ふむ、なるほど。セッパ。

 


はい。

 


女将が名前を呼ぶと、音もなく突然男が現れた。

 


A里を頼む。

 


承知。少年、名前は?

 


ぁ、あ、僕はアリスです。

 


 


それからはあっという間だった。

僕は、護衛をしてもらいながら逢魔時城下から自分の村まで3日かけて移動したのに、到着した頃にはB村は戦意を喪失していた。

 


僕よりも早く村に行き、B村とB国と戦い、勝っていた。3日のうちに終わってしまった事に戸惑いが隠せなかった。何故なら…

自分には村と釣り合う程の

特 技 な ん て 無 い か ら。

 


口から出たでまかせだった。

どうしても村を助けたくてついた嘘だった。

どうしよう。女の人たちは酷い事に…

子どもたちは食べられちゃう…

男の人たちは辛い労働に…

 


ど う し よ う

 


ど う し よ う

 


ど う し よ う

 


どうかしたか?

 


セッパさん!?

 


何を慌ててるんだい?何か希望に沿わなかった?

 


い、いえ!まさか3日の内に戦いが終わると思っていなくて…。

 


正確には戦闘に半日、交渉に1日だね。昨日には終わってたよ。双方の村には医療チームを派遣しているから、重症でなければなんとかなるだろう。炊き出しもしてるよ。

 


そんなことまで…ありがとうございます。

 


うん。じゃあ俺達は帰るよ。

 


え!?

 


ん?まだ何かやって欲しい事あるのかい?

 


いえっ!そうではなく!えっと…

 


…?あ〜、特技?

 


!?

 


それはもう見せてもらったから良いよ。君の特技はこの村に必要だろう?女将も満足していたから問題ないよ。

 


え?なっ、え!?

 


君、自分の村を守る為に自分を犠牲にしたよね。その上で村も取引のネタにした。何をされるか分からないのに、なかなか肝が据わってるね。

 


女将はあぁいう人だから、本当に利益があるか聞いたんだけど、君の姿勢を見て納得したんじゃないかな。とにかく、こちらから何か要求する事はないよ。治療が終わったら炊き出しも医療チームも出ていくから安心しなさい。

 


…そんな、

 


それでは、これからも頑張って。さよなら〜

 


あ、ありがとうございます!!!

 


は〜い。