Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

ミューリウム成長記01


母親から受け継いだ魔導書を盗まれた際、回収のいざこざでバラバラになったページを集めるために各地を探し回っている。
今回は東の果てファンタリースの街へ、ページ探しと大魔導図書館目当てで訪れていた。

んー、なんか最近進展ないなぁ。つーか魔導書じゃなくて医学書読んだ方がいいのか?

女神・魔族・混血についても調べている。既に慣れてはいるが、魔力の均衡が崩れる度に暴走しなきゃいけないのは煩わし過ぎて面倒臭い。
5冊あるうちの4冊を読み終え、最後の一冊へ手を伸ばす。

「空間操作」かぁ。これも外れぽい。ん〜…

期待せず読み進めていくと、ある項目に異空間を創り出す方法が書かれていた。魔法陣を書き、魔力を込めれば完成するが、空間を維持するには強い魔力を必要とするらしい。

自分の好きなように創り出せるんなら、家とか作れるんじゃないか?魔法陣をオリジナルにして、私だけの空間に…強い精霊の魔力は…。

ミューリウムは数冊の魔導書と、空間操作の本を(値切って)購入し、街外れに出てからテオを喚んだ。

あん?
ちょっと魔法陣を試したいの。
何しようってんだ?
魔導書にあったんだけど、異空間を好きに創り出せるの。魔法陣と大量の魔力が必要で…
魔力を注ぎ続けるやつか?
いや必要なのは最初と繋ぐ時だけみたい。
んならお前の魔力だけでもいけんじゃねーの?
うん、でもどのくらい使うか分からないから一応一緒にやって欲しいの。
おー。

魔導書にある魔法陣を少し改変してオリジナルにし、ミューリウムだけが知る魔法陣を創り出す。発動には持ち主の血と魔力を使う。

これを用意した布に描きます。この布は発動後自動的に燃えます。
なんで地面に書かねーんだ?
プライベートだから隠したいの。
ふーん。
そして呪文「マネサル」!

魔法陣は光り出し、青白マーブルへと変わる。2人はマーブルへと入っていった。
そこはリビングとなっており、テーブルと椅子、カウンターがあった。
質素な部屋だな。飾り気が全くない。
試しだから最低限しかつくってないの。本チャンは魔婆城のドアに繋げるつもり!
あぁ、あの狭い部屋な。
でしょー!テオの部屋も作ってあげるよ。
俺は森に家あるから。
別荘、別荘。
いらねー!お前がいる別荘て不穏過ぎる。
失礼な。
部屋はここだけか?
奥に寝室とお風呂。あと小さいベランダ。
ベランダ必要か?
気分転換に必要!
ベランダから見える森…
ん?
なんかは俺が住んでる森に似てるな…
そうなの?
あぁ、なんでだ?
さぁ…
で。出られるのか?
出てみようか。また魔法陣を書いて…「マネサル」!
おお、もう夜か。
戻れた!私天才!!
魔婆の家のキャパに魔力が収まるのか分かんねーけどな。上手くいかないんじゃねーか?
なにそれー!やってみなきゃ分からないじゃん。
冗談だよ。俺がついてるのに失敗するわけねーし?
んー、
あ?
私達2人して自信過剰だなとおもって。

…テオは気づいてないけど、実はちょっとズルをしています。大量の魔力は、ほとんどテオから引き出すよう作りました。だから森に見覚えあるんだきっと。私の魔力は侵入者を防ぐ為のボーダーとしてしか使ってないので少ない消費で済みます。魔法陣を発動する時だけ、いつでも・どこにいてもテオから引き出されます。今回2回もやって全然気づいてないから、大量とはいえ精霊のテオにかかれば毛ほども影響がないみたいです。持つべきものは精霊の友達ですね。
(でも、いずれは自給自足出来るように、魔力を貯める花を作ります。魔力をどのくらい使うのか分かれば万事オッケーです!それまでは、テオに甘えさせてもらいましょう☆)

紅緋◆01

紅緋は神楽女として用心棒を雇い、古城内に漂う幻光花を鎮めていた。

古城攻略中に用心棒の子どもの話を聞く。
 
奴隷狩りから助けた男の子を、男手一つで育てたという。剣術、体術を教えると、何をやらせてもすぐに会得してしまうが、コントロール不足での失敗が多いらしい。
魔導に関しては紅緋に頼みたいと冗談を言っていた。
 
 
用心棒と別れて数日後、例の古城近くで事件が起き、収める為に向かった手練れ達が大きな爆発に巻き込まれて多くが死亡したという知らせを聞く。
胸騒ぎがした紅緋は用心棒の住む街まで戻った。用心棒の安否を確認しに現場へ行くと、死亡・行方不明者のリストが掲示されていた。リストの中に用心棒の名前を見つけ、近くにいた警備員に詳細を聞く。
 
古城に住んでいた年老いた天来外来種が、大量にアルコールを飲み、召喚魔導・破壊魔導で大暴れしていたのを兵士や用心棒達が止めに行き、大爆発があったらしい。用心棒の子どもについて聞いて回ったが知っている者はいなかった。
 
古城は爆発で半壊していた。地下へと続く隠し通路の様子を見に中庭へ向かうと、壊れた噴水に少年が腰掛けていた。虚空を見つめたまま動く気配がない。
近づく足音に気づいた少年は素早く反応し振り向いた。
 
こんにちは
…こんにちは、
古城に住んでたの?
いえ。
じゃあ爆発の…
はい。父が爆発に巻き込まれて死にました。
その人、用心棒やってた?
…はい。あの、何故それを?
なんとなく。
…もしかして、紅緋さんですか?
うん。テオバルト(護衛の名前)さんとこの子?
はい。ラルフです。
そう…。行方不明の可能性は?
薄い希望は持ちたくなくて。
そっか…。
服や防具の欠片で判断できた人はいたらしいです。父の物は何も見つかりませんでした。
そう…。
ぼく…、
…?
…魔人の呪いを受けているんです。
魔人の!?
父に拾われる前…魔人の血を誤って飲んでいます…。それを理由に本当の家族からは捨てられました。
…そうなの…
 
<魔人の呪いは不幸を呼ぶ…>
 
僕が、父を殺してしまったんです。
それは違うよ。
僕が呪いを受けていたのに父に近づいたんです!僕のせいですっ!
自分を責めてどうするのさ。それより今後どうするか考えなさい。
…魔人を殺します。僕みたいなのが増えないように、全ての魔人を封印してやる。魔人の呪いに僕がなってやる。
君にそれが出来ると思えないなぁ。
なんでですか!?
魔人は強いよ。君も実体験したんでしょ。今の君じゃ無理だよ。
…ッ、じゃあ僕にその術を教えてくださいっ!
え。
あなたに弟子入りします。魔人を封印する方法を教えてください!お願いします!
いやいや。私も知らないし。
父から聞いてます!凄い魔導の使い手だったって!
だとしても、私は弟子を取らないから。
あっ…でも。僕が一緒だとあなたに不幸が来てしまう…やっぱり、自分でなんとかします。
(混乱してんなぁ)…。あのさ、普通のヒトなら魔人の呪いを貰ったらすぐ死ぬはずなんだけど、ラルフは大丈夫なの?
…そうなんですか?
うん…その印は?
これですか?これは生まれつきなんです。
それ、加護の印がある。もう発動されてるみたいだから今はただの刺青だね。
そうなんですか?加護…?
刺青に変化がなかった?
あ、昔は紺色だった気がします。
そうだよね、発動すると黒になるんだよ。普通、徐々に灰色に変化して消えるものなんだけど、消えないという事は何か意味があるね。
意味?
たとえば、ラルフがヒト種じゃ無い…とか?
ぇ。
身に覚えは?
ぃや……、ないです。
ふーん?(以外と冷静…怪しい)まぁ、テオバルトさんには借りがあるし。
…?
ラルフ。君に興味が出た。君がそうしたいなら私についてくるといい。ただ、弟子にはしない。自分で勝手に成長してちょうだいな。
えっと…ホントに良いんですか?呪いが…
呪いなんて捉えようだよ。それを言ったら私はもっと危険なのを持ってる、呪いだなんて思ったことないけどねw
…。
ちなみに、私は魔導の知識はあっても戦う技術はからきし。用心棒は常に入りようだよ。
…っ!? 行きます!ありがとうございます!父に代わって紅緋さんを護ってみせます。
ま。まずは自分の身は自分で守る事だね。よろしく!
はい。よろしくお願いします!