Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

ミズキ(2014.4)

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ドンドンドンドンッ!!

 

「んん?」

 

ガチャ

 

「どなた?」

「ミュー!!私の...赤ちゃんが...、」

「どうしたっ?」

 

ミューリウムの親友、ミリエが幼い子どもを事故で亡くし、精神的なショックから子どもを錬成してくれとミューリウムに頼んできた。親友の願いであり自分の研究にも近いものがあった為、ミューリウムはその願いを聞き入れた。

 

ミリエが持ってきた赤ちゃんの髪(DNA)とミューリウム特性素材を掛け合わせて練成し、出来た魂石をミリエの子宮に魔法で着床させ、妊娠させた。

魂石創りと使い魔創りを仕事にしているミューリウムにとって、ヒトを使った生成には興味があり、そのやり方は紙面上で何度も形にした。しかし、理に背く行為として実行に移してはいなかった。

 

魂石で生まれる使い魔は30分から1時間ほどで成長する。ミリエのお腹もみるみる内に大きくなっていった。1時間ほどで陣痛が起こり、出産した赤ちゃんにミューリウムは戸惑った。赤ちゃんはミリエではなくミューリウムに似ていたのだ。

ミリエは泣いて赤く腫らした瞳から、再び涙を流しはじめた。

 「ごめんなさい、ミューリウム。わたしはあなたに嘘をついていたの。」


ミリエの子どもは死んだのではなく、マジョルカという組織に攫われたのだと言う。ミリエは子どもを無事に返してもらう為、ミューリウムのDNAを含んだ使い魔を自分の子どもとして産むという条件を飲んでいた。

 「マジョルカといえば、変態集団の...。」

 

ミューリウムのDNAと魂石をリンクさせた為、そこから出来る使い魔はミューリウムの魔力を吸収して活動する事になる。使い魔に魔力を使わせ、ミューリウムにどんな反応が出るのか実験する事がマジョルカの目的だと推測した。

 

産まれた赤ちゃんを奪いに来たマジョルカの刺客を撃退し、親友と自分を陥れようとしたマジョルカを殺しに向かうミューリウム。だが、刺客の話によるとミューリウムを陥れたのはマジョルカ組織に所属している医者だという。その名はルブラン。

ルブランは過去にもミューリウムの前に現れては迷惑な事件を置いて行っていた。

「今回のは一番酷いな。お前は消滅した方がいいと思うよ。」

「そうか?でもさ、ミューがずっとやりたかった事ができたろう?」

「・・・。確かにそうだけど。お前が関わってるって知ってたらやらなかった。な~んて、言い訳しちゃうんだから私もくだらない奴だよ。」

「いやいや。好奇心には従うべきだ。なぜ理に従わなきゃいけない?どっかの誰かが考えた理通りなんかじゃ無く、”ミューリウム”のやりたいことをやるべきだろ?」

「良いこと言う。でもお前の感覚はダメだ。」

「親友のいう事なら理に背けるお前の感覚は良いわけ?w」

「それもダメ。好奇心はそうやって使うもんじゃない。今回の良い事といえば、それに気付けたことかな。」

「俺のお蔭~?照れるね~」

「お前じゃないよ。機会をくれたのはミリエだから。」

ルブランはイかれた医者と呼ばれる程ぶっ飛んだ思考を持っており自称ミューリウムファンである。今回のこともミューリウムの研究の手助けとして行なったのだと言う。ミューリウムとしても、ルブランがやったのなら合点がいくが、親友の身体と子どもを粗末に扱われた怒りでルブランの頭を吹っ飛ばした。


ルブランは不死身であり、頭が吹っ飛んでも死なないのだ。急所を突けば殺せる事は知っていても、何処が急所なのか分からない為、過去何度も殺してやろうと思ったミューリウムでもルブランを殺す事が出来ないでいた。
月に一回身体を粉々にする事で怒りを晴らすと約束し、ミューリウムはミリエの子どもと共に帰った。
ミューリウム家の避難所にて待っていたミリエとミズキ。攫われていた子どもを強く抱きしめてミューリウムに感謝と謝罪をするミリエ。

「ごめんなさい。私が弱いからミューリウムに頼るしか出来なかった...。子どもも守れなくて、お母さん失格だよね。」

「頼られて悪い気はしないよ?でもなぁ~、ミリエのお願いだからって、ミリエの身体の負担を考えずにやるのはダメだったよ。私は親友失格だ。」

「最低だなぁ私達。」

「でもま、こいつらにはあたしらしかいないんだから、シャキッとしないとなぁ!!」

ミズキには興味が無いと言っていたルブランだったが、いつ暴走するか分からない。ミューリウムは自分の近くで暮らさないかと提案したが、ミリエはある程度成長するまでは田舎で育てたいと望んだ。


ミリエは人間だが、ミューリウムの魔力を持って産まれたミズキは魔導士と言える。魔導士は15歳を過ぎると使い魔を錬成しに使い魔堂を目指して家を出る。その時までミリエがミズキを育てる事にした。ミューリウムは王都に店を持つため、ミリエと共には暮らせない。ミューリウムは親友家族を陰から見守っている事を約束し、ミズキの魔力を溜める魂石をミリエに渡した。