劇場◆第八章◆01
■精霊 熱意は人の心を打つ
おばあさま、魔法をおしえて?
魔法を?お前は魔女じゃないから無理だ。
おねがーい!何もできないのが嫌なの。
ふむ…。お前の両親に教わればいい。
魔法を?
違う。お前の母親は召喚が得意だろ。父親は憑依が得意だ。聞いてこい。
お父も母様も家にいないもん。
んなわきゃらないだろう。聴く前から諦めんじゃないよ。やる気ない証拠だ。帰りな帰りな。
違うよ、もうずっと帰ってこないの。今朝手紙が届いた。
…なんて書いてあったんだ。
長い間留守にするから、家を頼むって。そんなの…無責任だよ…。家には仕事の電話が来るし、メールも…でも私には何も出来ないし…自信ない…死ぬのも嫌だ…。
しぬぅ?お前の両親はどんな仕事してんだい。
わからない。内容もちんぷんかんぷんだけど…怪我して帰ってくる事もあったから…怖い。
ふ〜ん。
手紙の中に請求書もあって、私お金稼いでないから払えないなと思って…だから、魔法を教わって仕事しようと思ったの…
………はぁ〜。
…。
魔法は精霊から学ぶんだよ。
…精霊?精霊てなに?
精霊だよ。よく飛んでるだろ。
妖精?
違う。もっと高密度なエネルギー集合体だよ。
ん〜、見たことない、かも?
……。お前、もしかしたら精霊を寄せ付けないのかもしれん。
え。
精霊は女神の周りに集まるが、邪鬼は嫌うからなぁ。お前は両方持ってるから寄り付かないんだろう。
……そう。
……事実だからはっきり言うが、魔法は精霊から学ぶ。どの魔女もそうしてきた。例外はないよ。魔法は諦めるんだな。
…。
お前は体を鍛えな。
うん…。精霊って見えれば普通にお話しできるの?
魔力を少しでも持ってればどんな奴にも見えるし、声も聞こえるよ。見えないとしたら、見つからないように上手く隠れてるって事だ。
じゃあ話しかければ聞こえるって事だね。
まぁ、そうだね。
分かった!ありがとうおばあさま!
later
魔婆様、ミルスの様子がおかしいと子ども達が怯えているのですが…
う〜ん。あいつは可笑しいね、飽きるか諦めるまでやらせておきな。
はい…。
later
それでね、昨日はオムレツ作ろうとして失敗しちゃって、台所が大変な事になったんだよ!もうご飯だけで大混乱よっ!!
……
一週間…お話ししてみたね…。
一週間じゃ私の事分からないよね、う〜ん。あと自己紹介は毎日やるべきか、初対面が多いんだろうし…。
……っ。(ミルス泣きそう)
…さっ!そろそろ晩御飯のお買い物行かないと!
later
そしたらその猫パッととっていっちゃったんだよ!私のお魚!!お昼のメインだったのにっ!!まぁ、野良ちゃんだからあげたけどね。私は白ご飯だけチビチビたべました、とほほ。
……
そろそろ1ヶ月だよ〜。
出てこないと精霊の里に行って意地でも魔法聞くぞぉ〜?
……
1ヶ月か…。あれからずっとお父も母様も帰ってこない。使用人は家のもの盗みながら消えてく。魔法が使えない。なんの能力もない。
……淋しい
……
そうだ…羅宇と師匠ならまた会ってくれるかな!ぁ、家は空なんだっけ…探せないじゃん…。父様の部屋になんかないかな…。
later
っ痛って、
お前ホント気持ち悪いんだけど。
何1人でぶつぶつぶつぶつ言ってんだよ。騒音被害で訴えんぞ?
コイツ精霊見えないんだぜ?
呪われた子だからなぁーwwwwwww
つか、女神と邪鬼って狂ってんだろ!どう考えても自殺行為だよなっwwww
結果ガキは苦しんでるもんなぁwww
俺らにはカンケーねーけどぉー!!wwww
……
やられっぱなしは癪だらやり返したんだけど、この通りボロボロ〜。師匠に体術習ったのになぁ…羅宇ともあんなにやりあえてたのに…里に戻ったら本格的に修行っていってたからもう抜かされてるんだろうなぁ…
……
うじうじ言っててもしょうがないけどさっ!たまには毒吐いとかないと毒が充満しちゃう!
……
later
今日はお使いの依頼受けてやってみたの。このくらいのレベルなら出来たから、また受けてみる。なんか依頼はピンキリでさ。簡単なのから私じゃ受けられないような難しいのまで幅広い事に気付いたんだぁ。だからランク分けして判断しやすくしてみた。んで、難しい仕事は他に渡して仲介料もらってんの。私なりのやり方ちょっと見えてきたから、こんな感じでやってこうと思うっ!
……
later
あぁ〜。
今日死ぬのかなぁ〜。
こんな時にポンと精霊見えないかなぁ〜……。
…そんなんで見える程、簡単じゃねーんだって。
…ん。ここは…。
病院ですよ。傷だらけで倒れているところを商人さんが見つけて運んでくださったんです。
そう…なんですか。その商人さんは?
もう出発されましたよ。お名前も告げられませんでした。
そうですか…。
[ミルスお気に入りの泉のほとり]
……。
……
……。
(今日はしゃべらないのか)
……。
(?)
諦めようかな。
……。
3ヶ月間もよくひとり言言い続けられたなぁ。はたからみたらホント変な子だよね。
……。
そりゃあ誰も近づかなくもなる…。
……。
ましてや…忌み子。
……。
…やめよっかな…
……ワタシノナマエハみるす。
……?
……イマハヒトリダケド寂シクナイ。ダッていずれ仲間がたくさんできるってしってるから。
…え。…なにキミ。
お前の真似〜。
…似てないし。
そおか?まぁ似せようとは思ってないけどさ。
……。
あ〜お腹すいた、なぁお前のオムレツ食べたい。
え〜、オムレツ失敗してから作ってないんだよね。
知ってるwだからもう一回チャレンジしようぜぇ。俺ちゃんとしたの食ってみたい。
む〜じゃあ一緒に作ってよ。
そりゃダメだ!お前が作るのを食べたいんだから!
なにそれ!働かざるもの食うべからずだよっ!
俺は働かなくても食ってけるも〜ん。
なーにーそーれー!!むかつくぅー!!
ホラホラ早くオムレツ作ろ作ろ。
仕方ないなぁ。
そんでこのタイミングでご飯炊いとくんだよ。卵入れるタイミング大事だぞ。そうそう。
…。
あ?おいっ、焦げちまうって!
…ぅぐ、っうっうぅ…
なにやってんだバカ!焦げる焦げる!!
うぇぇええええええん、
あー焦げたぁ〜。
うぇぇええええええん
なに泣いてんだよ。
…やっと出てきた。
…。
…精霊?
おう。
…ホントの?
おう。
幻とか、私が作った妄想じゃない?
おう。
……うぇぇええええええん
ったく、オムレツがこれじゃ先が思いやられるなぁ。