劇場◆第七章◆01
俺は螺雅!父ちゃんと二人暮らしだ!
母ちゃんは俺を産んですぐに死んじまったらしいが、父ちゃんがいるから寂しくない!
父ちゃんは酒を作ってて、俺はそれを手伝ってる!酒はたくさんの人の手伝いがないと出来ないんだ!だから家で働いてる人は多い。父ちゃんは奉公人みんなに優しくて漢気があって俺の憧れだ!
◆
ある日小鬼が熊に襲われていた。
俺は熊を追い払い、小鬼を助けた。
小鬼は怪我をしていたので家に運んだ。
父親に事情を説明すると、家にあった薬で手当を行った。
なぜ医者へ連れていかないのか聞くと、人の医者は鬼を診ない。もし鬼が村にいると分かればこの子が殺されるかもしれない、と。
なんでだ?こいつは熊も倒せないのに、人間を殺せるわけないだろう?
知らない人種、文化には違いに対して恐怖や違和感をもつ。それを上手く収められなければ戦いや差別に繋がる。…つい先日、妖についての殺しの事件があった。コイツが関係なくも無駄に巻き込むことになるだろう。
そんな…分かってくれる人もいるかも…。
…そうだな。明日、親しい医者を訪ねよう。今日はもう遅い。
…父さんは怖くないの?
怖くないさ。お前は?
え。
お前は怖くないからコイツを助けようとしてるのか?
ぇ…恐怖は感じない。俺と違うのは分かるけど…怖さよりも、知りたい気持ちの方が大きい。
そうか。
父さんは鬼を知ってるの?
まぁな…酒がすきだ。
コンコン…
こんな遅くに誰だろ?
こちらでお世話になった者の保護者でございます。
小鬼の!?
…お前はココにいろ。
父は片手に木刀を持つと、ゆっくり戸を開けた。
そこには地面に正座をしているものたちがいた。
ご無沙汰しています。我らの子を手当てしてくださったと伺っています。心よりお礼申し上げます。後は私共で診ますので、お渡しいただけますでしょうか?
…あぁ。
まって、本当にこいつの親なの!?証拠がないと…もしかしたら虐められちゃうかもよ…!?
大丈夫だ。
なんで!!?
古い知り合いだ。子どもの顔は知らなかったが、信用できる。
え?
…こちらでお酒を頂きました。とても美味で今でも買い付けに来ています。
え!?そうなの!?
たまに動物が持っていくだろ?
あれ!?
そうだ。
知ってたの!?だから怒らなかったんだ!
そういうことだ。ホラ、熊にやられたらしい。
…これは。
ぼっちゃん!早く屋敷に!
うむ、今は落ち着いている。お前も冷静に頼むぞ?
…分かりました。お先に…
あぁ。
奥さん?
いや、息子の乳母だ。やつに母はおりません。
なんで?
こら、お前ズケズケと聞くんじゃないよ。
いやw構いませんよ。私は嫁をとっておりませんで。ある日捨てられていたあの子を拾ったんです。血は繋がっていませんが、息子の様に思っています。
今回も助けられてしまいました。また後日、お礼を申し上げに参ります。今日はこれにて…
…俺、種族や文化の違いがあっても仲良くできると思う…
…。
父は答えなかった。
◆
小鬼を助けて数日、村の畑が頻繁に荒らされるようになった。騎士団が近くの森を焼いており、動物が村まで降りてくるようになったからだとみんなが言っていた。
騎士団は森に逃げ込んだノウムを退治する為に焼いているんだそうだが、村に住む俺たちにとっちゃ良い迷惑だった。村をノウムに襲われることなんて滅多にないからだ。
螺雅、薬草が無くなりそうだ。採ってきてくれるか?
分かった!
ノウムや野生の動物に気をつけろよ。
誰に言ってんだよ!父ちゃんに鍛えられたんだからちょっとやそっとじゃやられねーぜ!
はは、だな。油断はするなよ。
おう!いってきまーす。
その後家に帰ると村は焼け焦げていた。
唖然と立っていたら騎士が近づいてきた。
村は鬼に襲われ、焼かれていた。そこに騎士団が駆けつけたが遅かったと。
(実は:騎士団が森に住む鬼を殺したから怒った鬼は騎士団へ迎え撃った。騎士団は森を抜けて村へ。村を巻き添えに鬼を皆殺しにした。鬼というだけで殺された。見た目や文化の違いで殺された)
俺は騎士に連れられて村を後にした。
◆