Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

逢魔時の城下町01

あまよいちゃーん!甘夜ちゃんいるかい?

 

あらあら、佐吉さんどうしたの?

 

やぁ、甘味の女将さん今日も綺麗だねぇ。

 

ありがとう。それで、そんなに慌ててどうしたの?

 

甘夜ちゃんいるかい?奥様が急いで甘夜ちゃん呼んでこいって朝から騒いでらしてさぁ。

 

佐吉さんおはよぉ。何かあったの?

 

おう!甘夜ちゃん!奥様が呼んでこいってね、駕籠はあるから、ささ!急いで!


えぇ!急だなぁ…ママ上行ってくるね?


はい。これお土産ね。粗相の無いように。


うん!ありがとう!



甘夜!遅いじゃ無いか、待ち侘びたよ!


すみません!あの、粗品ですがお菓子のお土産をお持ちしました。


おぉ、お前の店の菓子が粗品なもんかね。ありがとう。おこま。


はい奥様。甘夜さん、いつもありがとうございます。


おこまさん。ありがとうございます。


さて、甘夜。お前を呼んだのは他でも無い。我が家にネズミが入った。


ネズミ、ですか?


そうだ。我が家は広い故、いまだに見つけ出せていない。お前にはそのネズミの種類を特定してもらう。


ネズミの数は?


分からん。わしが知っているのは入った事だけだ。


分かりました。


必要であればお前の判断で駆除しても良い。とにかく把握し、報告しろ。


はい。


ったく。迷惑だよ本当に。あぁ、そうだ。もう一つ頼まれてくれないかい?


はい、なんでしょう?


これをあの阿呆に届けておくれ。


これは?


着替えと菓子だよ。


ふふ、分かりました。


悪いねぇ。そっちは急ぎじゃないからね。


◆◇◆


最近変わったことぉ?そーだなぁ、権兵衛のとこのガキが肥溜めに落ちたなぁ



最近の出来事?んー、おみちちゃんが川で河童を見たって言ってたわねぇ。


河童?


そぉ。なんか河童に驚いて腰抜かしちゃって、そのまま子作りしちゃったって浮かれてたわ。


はぁ?



猪が畑荒らしてんだよなぁ。迷惑してんのよぉ。



見たことない兄さんが扇子屋何処だって聞いてきたなぁ。だから、ここらじゃ松田屋が一番だって教えてやったよ。



うちの炭がたくさん売れたねぇ。なんでも祭りをやるんだとかでなぁ。



いくつか怪しいのはあるが、核心的なものはなかったな。…とりあえず荷物届けるかな。

 


こんにちは〜お届け物ですよ〜

 

おや、甘夜さんこんにちは。

 

これ、女将さんからです。お菓子だそうですよ。

 

わぁー萌葱君、優しいなぁ。わざわざすみません、ありがとうございます。あ〜、僕も何か…あ、そうです。

 


そう言いながら水門(みなと)は部屋の奥から肉の塊を持ってきた。

 


うわ、でっかいですねw

 

最近友人になった方がいまして、その方々が狩ってきてくださいました。

 

へ〜!強そうですね。

 

お二人共魔導士のようでしたよ。

 

魔導士?…その方々はもういないんですか?

 

今魔導の練習に出ています。そろそろお昼ですし、帰る頃だと思いますよ。甘夜さんも昼食食べていきますか?

 

あ、じゃあお願いしようかな。

 

 


水門ーー!!ちゃんとリンゴの木を生やせたよぉー!!

 

しかもちゃんと一本な。

 

凄いですねぇ。以前は大量に生やしていましたから成長が見られますね。


(ネズミ…こいつらじゃね?)

 


おかえりなさい、キウレにDiosa。頑張りましたね。

 

ただいまぁ〜!あれぇ?お客さん?

 

はい。和菓子屋さんの甘夜さんです。

 

ほぇー!和菓子屋さん!?ステキ!!

 

先程お菓子をいただきましたから、食後のおやつにいただきましょうか。

 

やったー!!お腹ぺこぺこぉ。

 

じゃあ僕は準備しちゃいますね。キウレは机を拭いてください。

 

はぁーい!

 

私も手伝います。



キウレさんはどこからきたんですか?

 

んー?そら?

 

空?…というと?

 

石板都市って知ってる?

 

いえ、知らないですね。

 

空に浮いてた石板があって、その上に住んでたんだよ。今は落ちちゃってるけどねぇ。

 

…水門さんは石板都市って知ってます?

 

かじった程度ですが。そもそも魔導士の末裔は石板都市にいたという話を聞きましたよ。

 

そうなの!?魔導士って空にいたの!?

 

確か1000年くらい前の話ですからなんとも言えませんが。

 

ん?キウレさんはお歳いくつなんですか?

 

え!?わかんないなぁ…寝てたからなぁ…

 

寝てた??

 

あの時は産まれたばっかだったし…Diosa知ってる?

 

知らん。

 

喋った。

 

Diosaさんはおいくつなんです?

 

年齢の概念はないな。

 

化け猫みたいなものだね。

 

シャー!

わぁーー!!

 


…水門さんは信じる?今の話。

 

まぁ、僕も魔導士のはしくれですからねぇ。魔導の起こりを調べたことがありますから、嘘のようには思えません。

 

ふ〜ん…。女将には2人のこと伝えてあるの?

あ、そういえばまだですね。後で挨拶にいきましょうか。

 

おかみ?

 

僕のパートナーですよ。

 

お前パートナー居たんか。

 

そうですとも!

 

1人寂しい魔神だからてっきり独り身だと思ってたぜ。

 

だからこそ!!だからこそ萌葱君といるんじゃないですか!!!

 

あーねー。



キウレです。こっちは友達のDiosaです。よろしくお願いしまーす!

 

…。

 

萌葱君?どうしました?

 

2人とも魔導士なんだな?

 

はい!

 

はぁ…。水門、ことの重大さは理解してるか?

 

と、言いますと?

 

この世に存在する魔導士はもはや少ない。そのうちの2人…1人と一匹が城下に入った事を黙っていたと言う事だ。

 

え!?ぃや、だって2人は悪い方々じゃありませんし、

 

能天気なお前が悪か善か判断できるわけないだろう!

 

あれ?悪者だと思われてない?

 

だな。

 

素性が分からないうちは自由にさせられない。そもそもお前達は何処から入った?水門の家にいたのだろう?

 

森で迷子になってて、水門の家を見つけたんだよ。

 

…分かった。

 


女将と甘夜の目が合う。

 


まぁまぁ、女将さん落ち着いてください。私も少し話しましたが、2人とも感じの良い方々でしたよ?

 

あの…どうしたら信用してもらえますか?

 

ふむ、そうだな…紅緋のところに行って来い。

 

紅緋さん!?

 

行けたら信用してやる。

 

何か大変なの?

 

いやぁ、どうかな…

 

水門は落ち着いているな。

 

ん〜多分お二人なら大丈夫だと思いますね。

 

そうなの?

 

はい。僕はそう信じてます。

 

なんだよ、力試しか?

 

そんなところです。

 

甘夜も行けよ。

 

なんで!?

 

久々に行って来いよ。

 

いやいや女将!必要ないって!

 

誰が監視するんだ?

 

女将ならいくらでもいるじゃーん!

 

お前もその1人だ。行って監視しろ、仕事だ。

 

はぁ…分かりましたよぉ。

 

なんか凄い気になるんだけど、なになに?

 

お前ら魔導士なんだろ?

 

そうだってば。

 

なら数日でいけるよな…

 

だからなに!?

 

はぁ…



ここが使い魔堂、紅緋さんの家で仕事場だよ。

 

つかいまどお?

 

紅緋さんは魔導士じゃないんだけど、不思議な導術を使えるんだ。結界やら式神やら使い魔やらよくわからん。その力で君達が善か悪か測ってくれるよ。

 

測られて、良いよってなったら信用してもらえるの?

 

そういうことだね。

 

分かった!頑張ろうね、Diosa!

 

めんどくせーなー

 

そんなこと言わないで!元気に行こう!

 

へーへー

 

こーんにーちはー!



扉を開けると雑貨屋だった。案外普通だとキウレが呟きながら中に入ると、景色が真っ暗になった。驚くキウレとDiosa。暫くすると葉の香りがし、前方から強い風が吹いた。

反射的に顔を腕で覆い守った。立っているのがやっとな程強い風だ。風が止んだところで、目を開けると、森の中にいた。

 


な、なんだぁ?

 

紅緋さんは導術で空間を作り出すんだって。君達がする事は、ひたすら進み続けて紅緋さんの所に辿り着くことだよ。

 

なんか…凄いね。こんなの初めてだ…。

 

空間転移の類か?

 

どっちに行けば良いの?

 

さぁ?私もわからん。

 

そーなの!?

 

行きたい方に行ったらいいよ。

 

分かった!行こう2人とも!

 


 

森 猿に追われる 猿山とバナナを出して引きつける

崖 魔導で跳ぶ

川 河童に襲われる 川の水をせき止めて一気に流したら自分達も流されてしまうがキウレはニコニコ 

砂漠 ひたすら歩く喉からからDiosaを抱っこしてそれでも歩く

 


はぁ…はぁ…

 

キウレさんさ、そんなにしてまで信用してもらう必要あるの?

 

ぼく…自分がなんで生まれたのか知りたいんだ…

 

 

ぼく…土から生まれて…嫌われてて、皆んなは誰かと誰かの間に生まれるのに。

 

…。

 

…。

 

あと、石板都市に行きたいんだ…

 

落ちちゃったって言ってなかった?

 

分からないんだよ。落ちちゃっててもいいし、まだ浮いてたらそれもいいし…行きたいんだ。

 

ふーん。それがなんで信用?

 

なんか楽しそうな町だし…甘夜ちゃんも、水門も、女将さんも優しいし物知りだし…他にも物知りな人多いのかなって…誰かしら石板都市のこと知らないかなって…思ってはぁはぁ…

 

情報収集したいのか。

 

はぁ…そういうこと…はぁ…結構大変だね…はぁはぁ

 

そんな簡単にいかないよな。

 

そだね、はぁ…甘夜ちゃんは疲れてないの?

 

まぁ、キウレほどでは無いな。

 

汗もかいてないし、凄い…はぁ…はぁ…

 

毎日お菓子作ってると体力つくんだよね。

 

D:無理がある。

 

ふふ。そういうことなら、頑張るしかないね!

 

へへ、うん!

 


バタン

 


え?

 


元気のいい返事と共に、キウレは気絶した。



はぁ!!!

 

D:うるさい。

 

すいません!…あれ?

 

甘:おはよう。

 

お…はよう、あなたはもしや!!

 


ふふ、紅緋です。ようこそいらっしゃいました。



とてもお早いですね、お店に入ってから2日で辿り着けましたよ。

 

え、2日経ってるの?

 

まじかよ。

 

経ってます。

 

でもずっと明るかったよね?夜にならなかった!

 

そういう空間なので。甘夜さんがヒントを出していたので早かったのかもしれませんね。

 

ご、ごめん。単純に気になって…。

 

問題ありませんよ。さて、キウレさんはご自分の出生や由縁を知りたいとのことでしたね。

 

!?そう!!知ってますか?

 

いえ、私は存じ上げません。

 

…そうですか。

 

ごめんなさい。ですが、あなたが純粋に答えを求めているのが伝わりましたので、信用に値すると判断しました。女将さんから預かった石をお持ちですね?

 

あ、うん。これ、模様が…ただの石だったのに!

 

それは魂石といって、マナに反応して変化する石です。それを女将さんに渡せば成果を伝えられますよ。がんばりましたね。

ありがとうございます!!



女将さーん!行ってきましたよ!!これが僕の成果です!

 

騒がしい!!

 

ごめんなさい!

 

ふむ…なるほどな。何日かかったんだ。

 

紅緋さんは2日って言ってた!

 

早いじゃないか。甘夜は10日はかかってたよな?

 

言わなくていいよ。

 

えぇ!?でも汗ひとつかいてなかったし、大変な顔してなかったし!!

 

素直なやつはすぐに攻略できるんだよ。あれこれ難しく考えるやつ程時間がかかる。

 

〜。

 

でも今回は甘夜ちゃんも一緒にでてきたよね?

私は一度攻略してるからな。

 

ここ(心)がブレてなきゃすぐに出て来られるんだよ。もしブレてりゃあすぐにはぐれて別の道に行っていたさ。よかったなぁ甘夜。

 

女将さんは意地悪いですよぉ。

 

親切心だよ。さて、キウレにDiosa。お前達の逢魔時城下への出入りを許可する。みんなご苦労だった。

 

◆◇◆