Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

劇場◆序章◆05

☣️桜雅様。ご報告があります。

 

夕食後の紅茶を飲んでいる桜雅を見て、机越しにAiが言った。

 

⚛️な、なんでしょう?

 

改まった空気で、敬語になってしまった。

 

☣️自由に出来るお金があと1週間で無くなってしまいます。如何致しますか?
⚛️…なるほど。今まではなんのお金を使っていたの?
☣️シャラクから出されていた賃金です。
⚛️え?貰ってたの!?今はタダ働き?
☣️そうです。
⚛️うわぁ〜知らなかったごめん。じゃあ私働くわぁ〜。
☣️どちらで?
⚛️お金稼ぐ時、どーゆーやり方があるの?
☣️店で働くのが一番安定した収入を得られますが、ピンキリです。寄り合い所に集まる仕事を請け負う事も可能です。こちらもピンキリ。
⚛️じゃあ寄り合いに行ってみるか。


ーー菫領の街ーー

 

🍷オススメの寄り合い?
⚛️うん。
🍷この街で一番でかい寄り合いはアルベガだが、でかいが故に人間には敷居が高いかもなぁ。亜ジャ羅に行ってみたらどうだ?人間っぽいのがいるし、犬の散歩から殺しまであるぜ?
⚛️んじゃあそこに行ってみるか。

 

酒場を出て紹介された場所へ向かう。

 

☣️亜ジャ羅ですか。
⚛️ひっかかる?
☣️亜ジャ羅についての情報は少ないので、判断に困りますね…。
⚛️分かってることは?
☣️家族経営、加護の使い手…くらいですかね。
⚛️加護?
☣️天来種等と契約して力を与えられた者です。
⚛️おおっ!?そんなのがあるのか。
☣️はい。
⚛️それ私にも可能?
☣️可能ですが、試練が過酷です。内容は詳しく知りませんが。
⚛️えー。
☣️桜雅様はまず魔導を体得なさる事が先でしょう。
⚛️分かった。

 

 

☣️この長い通路に貼られているものが仕事、受けたい仕事の紙を取って窓口へ持っていきます。いくつか質問され、適任と判断されれば受理完了です。

 

⚛️とりあえず、簡単そうなものを選んでみた。☣️期限は3日後ですね。
⚛️近くの村だね。
☣️この村では卵やチーズをいつも購入してますから、ご恩をお返しできます。
⚛️うん。村長に話をしに行こう。

 

ーー任務完了ーー

 

☣️エレメント操作が上達していましたね。
⚛️毎日訓練してるからね。
☣️成果が見えて素晴らしいです。
⚛️ありがと。あのノウムは弱い方かなぁ?
☣️知能が低かったので、弱い方かと。
⚛️だよね。でも最初はあのくらいで良かったかな。次は難易度アップしていく。
☣️はい。

 

村長にもらった任務完了印を窓口で見せる。

 

💁確認いたしました。こちらが報酬です。
⚛️どーもー。

 

⚛️これで5000リンか。
☣️妥当でしょう。
⚛️他のも見ていこ。

 

ーー別の日ーー

 

コンコン

 

⚛️こんにちはー。

 

コンコン

 

⚛️出ないなぁ…

 

コンコッガチャッ!!!ゴンっ


💫うるっさいなぁー!徹夜明けで眠いんだけどぉ!?

 

勢いよく開いた扉がひたいに当たり、後頭部を床に打ち付けて伸びる桜雅。

 

💫は?

 

 

💫あー、亜ジャ羅の所に出した求人見て来てくれたんだ?ありがとねー。
⚛️はい…
💫ところであんた魔道士だよね?
⚛️一応。
💫証拠っぽいの軽く見せてよ。何のエレメントなの?
⚛️えっとぉ、一応4種類いけます。
💫全部?
⚛️えぇ。
💫は?…じゃあこれ燃やしてみて。
⚛️はい。

 

小さな女性が持っていた葉が燃える。

 

💫じゃあ火を消して。

⚛️近くにあるバケツの水を操り火へ掛ける。焦げた部分を集めて石炭にし、風で宙に浮かせる。

💫ほぉ……。

🌐驚いた顔のまま桜雅を見つめる女性。

⚛️どおですかね?
💫ダメ元で求人したのに、まさかこんな魔道士が釣れるとはね。あたしはアメルテュム。妖精だよ。宜しく。
⚛️桜雅です。宜しくお願いします。

 

 

⚛️魔道具のお手伝いだって書いてあったんですが…。
💫そ。魔力を使って動かす道具ね。みたことある?
⚛️無いです。
💫そう?これがそうだよ。

⚛️なにこれ?
💫大事なものをしまいたい時に使う。魔力を注いでいる間は開く。
⚛️ふーん!
💫あとこれは武器だな。魔力を流すと刃が鋭くなる。魔力が強ければ石や鉄を切れる。
⚛️へー!
💫で、桜雅には魔道具の試作を使って色々実験して貰いたいんだよ。
⚛️安全?
💫物によっては危険かもね〜
⚛️危険な時は教えてくださいね…。
💫わかった〜

 

 

⚛️アメルは何故魔道具を創ってるの?
💫魔道具はよく売れるんだよ。
⚛️魔力を注がないと動かないのに?
💫大抵の種族は魔力を使うでしょ。エレメントを使えるのは魔道士だけだけど。
⚛️そうなんだ。

💫ふぅ。

 

目を細めて細かい作業を行っていたアメルテュムは、手を止め、近くにあった魔道具を手にする。

 

💫例えばこれ。魔力に触れると開いて盾になる。ホラ

 

桜雅へ投げ渡される。


⚛️おお!


短い円柱状のものが、折り畳み傘の様に開いた。


💫こっちは魔力を含んだ瞬間に爆発する爆弾、光線弾、煙幕。魔力が近づくと光るペンダント。こーゆーのを誰が求めると思う?
⚛️戦闘好き…
💫それもある。でも、魔導も魔力も戦う能力もない非力な奴等が自分を守る為に使うんだ。
⚛️え?
💫人間、非戦闘民族なんかが買っていく。
⚛️へー…。
💫攻撃としては使えないけど、身を守るちょっとした道具にはなるかな。気休めだけど。
⚛️…防具と武器を創ってるんだ。
💫それだけじゃない。暮らしの助けになるものもあるよ。むしろそっちが主だ。活動資金の為に防具なんかを創ってる。
⚛️…でも、人間も非戦闘民族も護衛をつけるからそんなに必要としないだろうし。
💫お得意がいんだよ。

 

 

💫よし。溜まってた試作品はこんなもんかな。これ、完了印ね。また気が向いたら頼むよ!
⚛️あの…このペンダント、買いたいんだけどいくらかな?
💫え?コレ?うちをお得意様にしてくれるんだったらあげるよぉ。ってかもっと良いのあげるから待ってて。


そう言うと奥の部屋へ消えていくアメルテュム。


💫えーっと確かこの辺にぃ〜


ガチャガチャ…ゴンガンドンッ


💫あ〜あったあった!ホレ
⚛️わぁ!剣?
💫そ!魔力込めてみっ。


桜雅が魔力を込めると剣の刃に沿って光が集まった。


💫普通にしてても切れるけど、魔力で鋭くすればもっと切れるってイメージで作ったんだけど、まぁ試作品だからさ。お代はいらない代わりに感想聞かせてっ!
⚛️ありがとう!使ってみるよ!

 

ーーーー屋敷に戻るーーーー

 

⚛️これ、剣の刃に魔力が流れやすい様になってる。そーゆー素材なのかな?その素材があるとすれば上手く活用できそう。
魔力が近づくと光るペンダントは距離感が曖昧で、確かな働きはしてくれない。しかも魔力を常に垂れ流してる奴にしか意味がない。
魔力に反応して形態変化させるのは面白い発想だけど、パズルみたいで考えるのは難しいや。

 

桜雅はその後、アメルテュムの店に通い、魔力を使って魔道具を開発していく。魔道具とそのレシピがいくつか完成した。アメルテュムの店は前よりも繁盛し、大きめの魔道具工房を建て、人を雇って作る様になった。

 

作るのは暮らしに役立つ雑貨が大半で、契約した種族にのみ戦闘用魔道具を作っていた。その間魔道具の試作品をいくつか試すバイトを請け負い、魔道具製作のノウハウを少しずつ学び盗んでいく桜雅だった。