クソ坊主のいい思い出
小さな子が寺の前で倒れていたので育てることになった。
容姿端麗で賢い娘であるが、この乱世を生き抜くには優しすぎる。どうしたらこの子に自己防衛の意識をつけられるだろうか。
そう思っていたところに近所のおてんば娘が修行と称して1年居候となった。こちらも容姿端麗な上、忍びの才能を見込まれている切れ者。しかし武芸に疎く、仕込む為にという目的だった。
私はこれ好機と考えたのだった。
◆◇◆
今日からうちで世話をする事になった甘戯です。甘戯、この子はサクラ。2人とも年が近いし、仲良くするようにね。
1年間、こちらで修行をさせて頂きます。不束者ではございますが、どうぞよろしくお願いします。
私こそ!未熟者ですが、仲良くしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
甘戯には、音楽・舞踊・読書など、武芸や立ち居振る舞いの稽古をつけます。それに加え、掃除を主とした毎日の作務にも取り組んでもらいます。
分かりました。
スケジュールや担当者は後で伝えます。作務はサクラに習ってください。今日は寺や周辺を散策するなど、自由に過ごしてください。何かあれば私かサクラに。
はい!よろしくお願いします!
◆
サクラは何歳なの?
私は12です。
私は11歳!
11歳なのに忍者なんて凄いね!
まだ見習いだよ。頑張ってやっと武器を持っての訓練をさせてもらえるようになったばかりだし。
それでも凄いよ。私なんて何もできないもの。炊事洗濯、お掃除くらい。
お経も読めるんでしょ?
んー、練習中。ただ読めるだけで、本当の意味はまだわからないし。
本当の意味って?
「悟り」みたいなこと
ふーん?それは難しいね。
◆
玄如様おはようございます。
おはようございます。甘戯。
はい?
パンッ
いっ、!?…何故頬を叩いたのですか?
自分で考えなさい。
◆
答えを、問うなっ!
パンパンッ
あ、あの…玄如様…
サクラは下がっていなさい。
ッ!…なにしやがんだクソ坊主!!私のなにが気に食わないってんだ!1ヶ月も意味不明に叩きつけやがって!理由があるなら直接言ってみやがれ!
…。
んだよ、何にも言えねーのか?
愚かな。
調子に…乗んなよ!
シュッ
やめて!!
ぇ、!?
やめて。甘戯。
サクラ…。お前は何にも思わないのかよ。玄如様が理由も無しに叩くわけが無い。でもその理由を言うつもりもない。だよな?行き場のない憤りは本人に直接向けるっ!お前はすっこんでろ!
いけません!あなたは何を学ぶ為にこちらにきたのですか!?一度冷静に考えてください!
考えただろ!?お前にも相談した!それでも分からないから聞いてみたら、さらに強く叩かれたぞ!なんなんだ!坊主なら坊主らしく説法でも説いてみろってんだよ!
答えをすぐに伝えてもあなたのためにはならないわ。玄如様に意図があると思ってるならその意図を考え続けたらいいじゃない!
1ヶ月しただろうが!お前も知ってるだろ!!
考え続けるのよ!
やり返しちゃいけないってのか!?
そうよ!
無理だ!どけっ!!
きゃっ!…んー、もお!分からずやぁ!!!
な!?やめろ!髪を掴むなっ!!
あなたがやめないからよ!
だって私わるくないだろ!
おしとやかじゃないもの!
今のお前もだろ!
あの…お師匠様。
はい?
止めなくて良いのですか?
…はい(ニコリ
◆
おはようございます。玄如様ぁー!
!
こらぁー!
パーンッ!
サクラっ!邪魔するな!
玄如様に乱暴するのはやめなさい!
玄如様が仕掛けてくるからだろぉ!?
あなたが未熟だからでしょっ!
だからって理不尽にする必要はないはずだっ!
理不尽ではないわ!意図があるはずよ!
じゃあ聞くが、お前はその意図を理解してんの?
ぐっ!
お前だって分からないじゃないかー!
グワーンッ!(玄如が大鍋で後ろから叩く音
ぅっわぁぁああああ!!!?
甘戯ぃ!?甘戯大丈夫?たいへーん!!!
おや。やり過ぎましたね。
◆
サクラ。
あ、銀次様。
遅くに何を作ってるんだ?
あ…、甘戯の…。
あぁ、あいつ夕方から何も食べていないものな。
はい…。
今から様子を見にいくところだったんだ。良ければ私が持っていこう。
え!?
いけないのか?
あ…いえ。お願いします。
うん。
◆
スッ…。
グッグッグッ
ん、はぁ、はぁっ
銀次様。
サクラが甘戯に夜食を作っていたから預かってきた。
あ、ん、サクラが?
今でこそお前に似てきたが、元はおしとやかな優しい娘だからな。
はぁ、ぁっ、んん、
今日の調子は?
だいぶ慣れてきたようです。
そうか。変われ。
はい。
あ!ん、はぁ〜疲れた。
まだ終わってねーよ。
だって!サクラのご飯が!
終わってからにしろ。
えー!
お前ね…。これも修行の一環だろうが。夜伽に余裕が無けりゃ取れる情報も取れねーんだぞ?
んん、でもあったかいうちに食べたいもん。
じゃあ早く俺を満足させてみろ。
分かった!
ったく。色気の無ぇこと…。
◆
サクラ…?
ん、なぁに?
おはよ。
おはよう。
あの、さ。昨日、夜食食べたよ。
あらそう。
…美味しかった。ありがとう。
どういたしまして。これに懲りたら玄如様にちょっかい出さないことね。
私が出されてる方なのに。
…ねぇ、なんでだと思う?
へ?
玄如様は本当に素晴らしい方だって村ではみんなに尊敬されてる。私だって尊敬してる。…だけど、あなたにだけは…酷いことして…。
へ?
え?
え、サクラ気付いてなかったのか?
…何を?
……。
◆
たぁっ!
ほーれ。
うりゃっ!!
わーぉ。
んもー!!真面目にやり返しなさいよ!
いや、だってホラ。私が本気出したらお前筋肉痛になっちゃうだろ?女の子は筋肉痛になんてならないのよとか言ってたじゃないか。
…でも、あなたと喧嘩するようになってから家事がスイスイ出来るようになったんだもの。
そりゃー筋肉がついて動きも素早くなったからだろー。
…それに、この間お使いに出た時…
『おい。坊主共、その荷物置いていきな!
さ、山賊です!
逃げましょう。
皆様は先に!私が後ろを守ります。
そんな!サクラ様も共に!
おらおらー!!荷物置いてけってー!!
ドカーン!バゴーン!
サ、サクラ様?
わ、私ったら…
す、すごいです!甘戯様との修行の成果ですね!!
いえ、あれは修行ではなく…
サクラ様。助かりました。ありがとうございます。』
なんてことが…。
はははは!!!凄いな!大人しかったサクラはどこに行ったんだ?
あなたのせいでしょ!!
玄如様のせいだろ?
違うってばー!!
◆
1年間、お世話になりました。
はい。よくやりきりましたね。誇りにし、更なる精進を続けてください。また何かあれば訪ねてきてくださいね。
ふふ、その時は引っ叩かないでくださいね。
…甘戯。
スッ 甘戯の前で膝をつき、甘戯の右手を両手で包む玄如
え!?
あなたには本当に感謝しています。数々の仕打ち、申し訳あり
玄如様。
(甘戯も膝をついて玄如の目線に合わせ、手を両手で包む。
良い友を紹介してくださり、ありがとうございます。サクラは様々な女性らしさを私に教えてくれました。そのお返しに、護身術くらい教えさせてください。
…なんと。バレていましたか。
ふふ。見習いでも一応忍者ですから。
今度は、(立ち上がりながら
お仕事も依頼させていただきますね。
はい。その時はサクラも誘って共に強くなりましょう。
勝手なことばかり言って!
サクラ。
今度戻ってくる時は美味しいお菓子持ってこないとお寺に上げてあげないんだから!
おいおい、泣くなよ。
泣いてなーーーい!!
ははは!
もーー!!
◆