Theatrum

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

劇場◆第七章◆01

俺は螺雅!父ちゃんと二人暮らしだ!

母ちゃんは俺を産んですぐに死んじまったらしいが、父ちゃんがいるから寂しくない!

 


父ちゃんは酒を作ってて、俺はそれを手伝ってる!酒はたくさんの人の手伝いがないと出来ないんだ!だから家で働いてる人は多い。父ちゃんは奉公人みんなに優しくて漢気があって俺の憧れだ!

 


 


ある日小鬼が熊に襲われていた。

俺は熊を追い払い、小鬼を助けた。

小鬼は怪我をしていたので家に運んだ。

父親に事情を説明すると、家にあった薬で手当を行った。

なぜ医者へ連れていかないのか聞くと、人の医者は鬼を診ない。もし鬼が村にいると分かればこの子が殺されるかもしれない、と。

 


なんでだ?こいつは熊も倒せないのに、人間を殺せるわけないだろう?

知らない人種、文化には違いに対して恐怖や違和感をもつ。それを上手く収められなければ戦いや差別に繋がる。…つい先日、妖についての殺しの事件があった。コイツが関係なくも無駄に巻き込むことになるだろう。

そんな…分かってくれる人もいるかも…。

…そうだな。明日、親しい医者を訪ねよう。今日はもう遅い。

…父さんは怖くないの?

怖くないさ。お前は?

え。

お前は怖くないからコイツを助けようとしてるのか?

ぇ…恐怖は感じない。俺と違うのは分かるけど…怖さよりも、知りたい気持ちの方が大きい。

そうか。

父さんは鬼を知ってるの?

まぁな…酒がすきだ。

 


コンコン…

 


こんな遅くに誰だろ?

こちらでお世話になった者の保護者でございます。

小鬼の!?

…お前はココにいろ。

父は片手に木刀を持つと、ゆっくり戸を開けた。

そこには地面に正座をしているものたちがいた。

ご無沙汰しています。我らの子を手当てしてくださったと伺っています。心よりお礼申し上げます。後は私共で診ますので、お渡しいただけますでしょうか?

…あぁ。

まって、本当にこいつの親なの!?証拠がないと…もしかしたら虐められちゃうかもよ…!?

大丈夫だ。

なんで!!?

古い知り合いだ。子どもの顔は知らなかったが、信用できる。

え?

…こちらでお酒を頂きました。とても美味で今でも買い付けに来ています。

え!?そうなの!?

たまに動物が持っていくだろ?

あれ!?

そうだ。

知ってたの!?だから怒らなかったんだ!

そういうことだ。ホラ、熊にやられたらしい。

…これは。

ぼっちゃん!早く屋敷に!

うむ、今は落ち着いている。お前も冷静に頼むぞ?

…分かりました。お先に…

あぁ。

奥さん?

いや、息子の乳母だ。やつに母はおりません。

なんで?

こら、お前ズケズケと聞くんじゃないよ。

いやw構いませんよ。私は嫁をとっておりませんで。ある日捨てられていたあの子を拾ったんです。血は繋がっていませんが、息子の様に思っています。

 


今回も助けられてしまいました。また後日、お礼を申し上げに参ります。今日はこれにて…

 


…俺、種族や文化の違いがあっても仲良くできると思う…

…。

 


父は答えなかった。

 


 


小鬼を助けて数日、村の畑が頻繁に荒らされるようになった。騎士団が近くの森を焼いており、動物が村まで降りてくるようになったからだとみんなが言っていた。

 


騎士団は森に逃げ込んだノウムを退治する為に焼いているんだそうだが、村に住む俺たちにとっちゃ良い迷惑だった。村をノウムに襲われることなんて滅多にないからだ。

 


螺雅、薬草が無くなりそうだ。採ってきてくれるか?

分かった!

ノウムや野生の動物に気をつけろよ。

誰に言ってんだよ!父ちゃんに鍛えられたんだからちょっとやそっとじゃやられねーぜ!

はは、だな。油断はするなよ。

おう!いってきまーす。

 


その後家に帰ると村は焼け焦げていた。

唖然と立っていたら騎士が近づいてきた。

村は鬼に襲われ、焼かれていた。そこに騎士団が駆けつけたが遅かったと。

(実は:騎士団が森に住む鬼を殺したから怒った鬼は騎士団へ迎え撃った。騎士団は森を抜けて村へ。村を巻き添えに鬼を皆殺しにした。鬼というだけで殺された。見た目や文化の違いで殺された)

 


俺は騎士に連れられて村を後にした。

 


ある団体のこと

小さな子どもが息を切らして走っている。

 


助けてください!

 


子どもが叫び声かけたのは、果物や木のみがいっぱい入った箱や袋を運ぼうとしている数名。

 


子どもの剣幕に只事ではないと判断し、その場にいた者達は耳を傾けた。

 


子どもによると、

自分の村と近くの村が、対立しており長く戦闘が続いているのだという。

保護国に助けを求めたが、他に戦争中なので手を回す余力がないと言われてしまった。そんな中、相手側の村はその保護国から援助を得て数日後には村を攻めてくるとの情報を得た。万事休すかというところ、逢魔時城下のことを知った。お礼はするので助けて欲しい、ということだった。

 


子どもは説明を終えると、疲労からか倒れてしまった。

 


 


子どもが目を覚ますと、ベットに寝かされていた。起き上がり辺りを見回すと、1人の白髪の女性が椅子に座っていた。

 


やぁ、起きたか。

 


あ…こんにちは、た、助けてくれてありがとうございます。

 


うん、挨拶とお礼ができてすごいな。私は女将、この城下を管理してるよ。あんた、うちに助けを求めに来たんだって?

 


え!あ、はいっ!そうです!どうか助けてください。

 


いいよ。それで、あんたはうちに何をしてくれるんだい?

 


僕にできることなら、お礼はなんだってします!!

 


だから何してくれるの?うちが動いたとして、どんな利益があるか教えてくれ。

 


り、りえき…?

 


無いなら動く意味はないなぁ。今回の事は無かったことにしてくれ。

 


そんなっ!困ります!数日後には村が無くなってしまうかもしれないのに!!

 


んー、でも君はうちに利益があるかどうか言えないんだろ?そもそもなんで君みたいな小さな子どもがくるんだい?村長やお偉い方がくればよかったんじゃないの?

 


そ、それは…大人はみんな戦いに出てるから、走ってここに辿り着けるのは…僕だけだって。

 


ふ〜ん?何も持たされなかったの?

 


あ!お金ですか!?お金ならありますよ、これくらい!

 


はははっ!うちに何人いるか知ってるか?300だぞ?そんだけの金で全員の食事が賄えると思うかい?

 


そ、それでは僕が食事を作る手伝いをします!

 


間に合ってるよ。

 


で、では農業をお伝えします!

 


それも間に合ってる。

 


えっと、えっと。

 


もうしまいかい?じゃあね、無駄足をさせたな。

 


待ってください!!!

 


…なんだ。

 


僕を売ります!!!

 


…お前を?

 


はい。僕を売ります。他の所に売るでも、奴隷にするでもお好きに使ってください。

 


こんな細っこい子どもが売れるとでも?

 


売れますよ。なんたって僕には誰にも負けない特技があります。

 


ほぅ?それは?

 


今は言えません。

 


…ふ〜ん?

 


お助けいただけたのならば、必ずご期待に応えてみせます!

 


もし私の期待に応えられなかった場合は?

 


応えられなかったら…村を焼いてください。

 


…ぷ、なんだそれ。助けてもらいに来たんじゃ無いのか?

 


そうです。僕の敵はB村で、あなたがたではありません。助けていただいた後は、女将さんの好きなように扱ってください。

 


そもそも、あんたの命と村が同等だとでも?

 


はい。僕の特技はそれだけ希少なものです。

 


ふ〜ん?いいのか?女は性奴隷、子どもは食用、男は重労働だぞ?

 


っ、…良いです。

 


ふむ、なるほど。セッパ。

 


はい。

 


女将が名前を呼ぶと、音もなく突然男が現れた。

 


A里を頼む。

 


承知。少年、名前は?

 


ぁ、あ、僕はアリスです。

 


 


それからはあっという間だった。

僕は、護衛をしてもらいながら逢魔時城下から自分の村まで3日かけて移動したのに、到着した頃にはB村は戦意を喪失していた。

 


僕よりも早く村に行き、B村とB国と戦い、勝っていた。3日のうちに終わってしまった事に戸惑いが隠せなかった。何故なら…

自分には村と釣り合う程の

特 技 な ん て 無 い か ら。

 


口から出たでまかせだった。

どうしても村を助けたくてついた嘘だった。

どうしよう。女の人たちは酷い事に…

子どもたちは食べられちゃう…

男の人たちは辛い労働に…

 


ど う し よ う

 


ど う し よ う

 


ど う し よ う

 


どうかしたか?

 


セッパさん!?

 


何を慌ててるんだい?何か希望に沿わなかった?

 


い、いえ!まさか3日の内に戦いが終わると思っていなくて…。

 


正確には戦闘に半日、交渉に1日だね。昨日には終わってたよ。双方の村には医療チームを派遣しているから、重症でなければなんとかなるだろう。炊き出しもしてるよ。

 


そんなことまで…ありがとうございます。

 


うん。じゃあ俺達は帰るよ。

 


え!?

 


ん?まだ何かやって欲しい事あるのかい?

 


いえっ!そうではなく!えっと…

 


…?あ〜、特技?

 


!?

 


それはもう見せてもらったから良いよ。君の特技はこの村に必要だろう?女将も満足していたから問題ないよ。

 


え?なっ、え!?

 


君、自分の村を守る為に自分を犠牲にしたよね。その上で村も取引のネタにした。何をされるか分からないのに、なかなか肝が据わってるね。

 


女将はあぁいう人だから、本当に利益があるか聞いたんだけど、君の姿勢を見て納得したんじゃないかな。とにかく、こちらから何か要求する事はないよ。治療が終わったら炊き出しも医療チームも出ていくから安心しなさい。

 


…そんな、

 


それでは、これからも頑張って。さよなら〜

 


あ、ありがとうございます!!!

 


は〜い。