甘能美にあふれた世界

創作の引き出し。創作途中の話もあるので、突然文章が変わる事があります。

ミズキと魔女 (2014.4)

旅立ち
白に水色のメッシュが入った髪を持つ男の子ミズキ、母と兄に別れを告げて使い魔堂を目指す。

迷いの森
・凶暴な魔物
母から教わった護身術を使い負傷しつつもなんとか回避を続ける。
・誘惑の悪魔
負傷した傷が激しく痛みだし、膝を付く。「その痛み、とってあげるよ」「君の名前を教えて?」人など見当たらなかった森の中で突然現れた人物。柔らかい笑顔を向けてくる男の後ろには怪しい気配が感じられた。男の申し出を断り続けると、みるみるうちに表情を変え、更に痛みを与えてきた。「痛みだけじゃつまらないから、絶望的な気持ちにさせてあげる。どうやらキミは魔女でも人間でもないね。紛い物だ笑」
・神秘的な湖
悪魔の言葉に動揺を隠せないミズキ。フラつきながら湖に近づく。痛む傷口を湖に浸す。「知ってたさ。母と兄は人間なのに俺は魔法を使える…可笑しいのは、分かってた…」

妖精と出会う
・妖精
不思議そうな顔でミズキを眺める妖精。
「知ってたの?」
「え!?」
突然話しかけられた相手が小さくて驚くミズキだが、食いつき気味で質問してくる妖精にノせられて答える。
「なんで知ってたの?」
「かっ、母さんから、聞いたから。」
「なんてなんて?」
母から告げられた日を思い出すミズキ。
「……」
「…。」返事を待つ妖精。
「俺は母さんのお腹から産まれたけど、違う人からお腹に預かったんだって…」
「誰から?」
「魔女の…ミューリウム」
「えぇー!?そうなんだ!!凄いねっ!知らなかったよぉー!!」
「ミューリウムを知ってるの!?」「うんうん。よく森にくるよぉ。ね?」「うんうん。」「来るくる」「植物とか採ってくよね」
いつの間にか増えていた。
「ミューリウムがどこに住んでるか知ってる?」
「知ってる?」「知らなぁい」「知らなぁい」
「じゃあ、いつも森のどの変に居る?」
「あっち!」「いつもあっちに居るよ!」
妖精に引っ張られて辿り着いたのは小さな洞窟だった。
「ここ?…あれ?」
気づくと妖精は消えていた。
・小人
薄暗い森の中、急に淋しさがこみ上げてくる。この洞窟の先に何があるのか…ここでじっとしているくらいなら洞窟に入った方が…
忘れていた傷がまたズキズキ痛み始める。
「どうした?」
緑色のとんがり帽子を被ったドワーフに話しかけられた。
「そこに入らないならどいとくれ。ワシそこに入りたいんだ」
「この洞窟はどこに繋がっているんですか!?」
「知らんね。君の望むところに出るじゃろ。」
そう言って洞窟に入って行ったドワーフ
「チミ、この洞窟初めて?」
行ってしまったかと思えばヒョイと顔を出してくれた。
「初めて…ていうか、森で迷っちゃって…ッ」
「怪我をしてるのかい?どれ、見せてみ。」
懐から薬のような物を出して塗ってくれた。
「少しすれば痛みは引くじゃろ。ただし、痛み止めじゃからな、医者に診てもらえよ。」
「ありがとう。」
「うん。じゃあな。」
「あ!あのっ」
「そうじゃ、チミ、この洞窟初めて?」
「はぁっ、はい!初めてです。」
「そうか、この洞窟はな、本来なら存在しない曖昧なものなんじゃよ。人間の前には絶対現れぬ。チミのような魔法使いやワシみたいなもんが呼び出せるんじゃ。」
「魔法使い…」
「そうじゃ。洞窟は望む場所に繋がる。だからワシが入ったらちょっと間を置いて入れよ。ワシの望む所に出ちまうからな。」
「分かった。ドワーフさんありがとう」
「いいよ。チミは素直でいい子だからさ、お節介したくなっちまった。ははは」
笑い声が洞窟の奥に消えていく。
痛みが引いてきた…、淋しさもちょっと無くなった…
「そろそろ、いいかな。」

ウーニャに辿り着く
意外と狭いな…
最初は歩いていたのに、中腰になりついには四つん這いで洞窟を進んでいる。
「もしかしてドワーフさんの所に繋がってない?」
ハッとして止まるミズキ。
「俺の行きたい所、俺の行きたい所、ミューリウムミューリウムミューリウム…」
使い魔堂を目指す当初の目的からミューリウムにすり替わっていることに気づかないミズキは目を瞑り、言葉に出して念じてみる。
すると、何かに引っ張られるような、呼ばれるような感覚がした。
「…よし。」
再度気を引き締めて洞窟の先を目指す。


「何にも見えない。」
行き先を定めてから10分程して何も見えないくらい真っ暗になった。行くか戻るかの道しかない洞窟を、ひたすら暗闇に向かって進み続けている。
「いでっ!…ッた~、何かに当たった!これは…」
洞窟の端に辿り着くと、そこにはドアのようなものがあった。
「ドアのぶは無いのか…。どうしよう。……」

トントン

おもむろにドアをノックしてみる。

「すみませーん。ミューリウムの所に行きたいんです。開けてくださーい。」

トントン  トントン

ガチャ

「開いた!?」
「おや?見ない顔だね。いや、誰の顔も覚えてないんだけどねっあはははは」
茶色いローブを着た鼻の長い、元い鼻の高い白黒の毛深い生き物が豪快な笑い声で出迎えてくれた。
「さぁ、ウーニャの町へようこそ。少年。」
「ウーニャ…」
優しい色の家々、活気のある市場、美しく吹き出す噴水の周りには陽気に歌う者や楽しく語らう者達…。
「わぁ…」
「すげぇだろ?ありゃ王国さ。国王様が居るんだぜ?そりゃ当たり前か!あはははは」
振り返ると洞窟の入り口は無くなっていた。
「あぁ、通路は閉じちまったぜ?後がつっかえちまうからなぁ。お、キタキタ!」
ミズキが出てきた扉とは違う、立派な装飾が施された扉が現れた。
「よぅ。見ない顔だね。いやっはっはっはっ!!」
「あの、なんで俺のと扉の形が違うの?」
「じゃあなー。あ?そりゃ同じ扉なんていっこもねーさ。て少年、マジで新参者かい。」
「うん。初めて来たんだ。」
「そーかいそーかい!ようこそ!あんた見たところ魔法使いだね?魔法使いがあんな小さい扉から出てくんのは初めてだ。はっはっはっ」
「さっきの豪華な扉から出てくるの?」
「一概にそうとは言えねーがな。あんた、心細かったんじゃねーのか?異次通路は感情に反応するからよ。」
「感情に?」
「おう。通路を通ってる時どんな気持ちだった?」
「…ミューリウムに会いに来たんだけど、森で迷ったり、悪魔にあったり…。確かに心細かったかも…」
「あん?ミューリウム探してんのか?じゃあ捕獲猫に行きなよ。あいつの店だ。」
「え!?ここに居るの!?それどこですか?」
「あー、確か3ブロック先だった気がするぜ?捕獲猫って看板があるからわかると思うぜ~」
「ありがとう!!」

ミューリウムと出会う
「3ブロック、3ブロック先…はぁはぁ、」
2ブロックを全速力で走るミズキ。
めっちゃ遠い…疲れた…
「3ブロックて、遠い…はぁ、はぁ」
「やぁ、そんなに急いでどうしたんだい?」
白髪に綺麗な紫色のメッシュがかかった猫目の女性に話しかけられる。
「ほ、ほ、かく猫ってお店を、探してて、」
「あぁ、それならあそこに見える赤黒屋根がそうだよ。でも、今日はお休みだよ?」
「え、そうなんですか!?」
「うん。買い物かな?」
「いえ…人を探してて…ん?それって…」
「ん?この子?私の使い魔だよ。猫だ。」
「猫…?使い魔…っ!?あぁっ!俺そもそも使い魔を錬成するんだった!あの人の事ばっか考えて…あ、あの、この辺に使い魔堂てあります?」
「あるよぉ。あっちに裏山があるんだけど、登り続けた先にある。使い魔にする魂石はちゃんと持ってる?」
「はい。これです。」
「…そうか。」
「…?」
女性はミズキの魂石を見つめて静かに微笑んでいる。
「ふふ、良い色の魂石だね。使い魔堂は、行くまでが大変なんだ。どんな事があっても諦めないで進みな。頑張って使い魔にしておいで。」
「…うん!」
「さ、いっといで。」
「ありがとう!行って来るね!」

使い魔堂に向かう
なんか、心があったまる感じがした…。元気もらっちゃったかも。
「よし。使い魔堂目指すぞっ!」
裏山の入り口は整備がされておらずとても人が入れるような雰囲気では無かった。
いつ立てられたのか分からない痛んだ木の柵がサビと苔に包まれた鎖で繋がれていたが、全く意味をもっておらず、飾りのように引っかかっているだけだった。
「森に入れたく無いのか入れたいのかはっきりしろ」
植物が生い茂ってはいるが、人が通れる程の隙間は見つかる。
「昔は道だったのかもなぁ」
身体や顔に木の枝の傷をつくりながら進んで行く。
どんどん進んで行いくと山を登っているのだと感じさせるように傾斜がきつくなっていく。
周りの木々が少ない場所に出たかと思えば、目の前には人の為に用意された階段とは全く別物の高い段差がく伸びていた。
ミズキは大きく息を吐いてから段差に目を向け、再び歩み始めた。

ウーニャに着いた時、頭の上にあった太陽も、今ではすっかり低い位置に下がっていた。辺りには美しい夕焼けが広がっている。
ミズキは段差を目の当たりにしてから一度も歩みを止めずにここまで登って来ていた。
「一種のランナーズハイみたいな感じ、かな?あ~空気が薄い~」
下の景色は上から眺めたい。
それまで楽しみはとっておこう。今は上を目指すんだ。

思えばここまで来るのに色々あった。15年間一緒に過ごした家族と別れて新しい仲間を迎える旅に出て、初っ端から森で迷子になる。
性格の悪い嫌味な笑顔の悪魔に攻撃されるわ、気分悪くされるわで最悪だった。
でも可愛い妖精達に元気を貰って、小人さんに親切にして貰って、ウーニャでも色んな人に助けて貰った。
ミューリウムには会えなかったけど…。
「町に戻ったらもう一回店に寄ってみよ。」

「うわっ!」
突然足場が消えたかと思えば、目の前には広い空間が広がっていた。
「いや、今の今まで目の前にまだ山が続いてたのに??消えたよね今!!あ」
大きく虚空に向かってツッコミを入れると、目の前に建物がある事に気づく。
「着いたのかな…」
案外…キツくなかったかも。

振り返ると一面真っ暗な海があった。想像では町明かりがチラチラと見える景色だったが、これはこれで圧巻だ。今にもこの黒い海に飛び込みたい衝動にかられてしまう程。
「にゃ~」
「は!」
吸い込まれてた…ホントに落ちたらシャレにならないぞ。
「にゃ~ぁ」
「あれ?こんな所に猫が…」
猫はミズキを見ると、顔を洗い、建物の方へ歩いて行った。
「お前の家なの?」
猫を追うミズキ。

建物に近づいてその存在感に圧倒される。赤と濃い紫を基調とした中華風の小さな城のような建物だ。横には大樹が寄りかかるように存在していた。建物には大きく、看板が飾られていた。
「使い魔堂…」

扉には営業中の文字

ガチャ…

中は暗く、部屋の真ん中にボゥっと明かりが灯っている。

「いらっしゃい。ようこそ、使い魔堂へ」
灯りの近くに居たのは白髪に綺麗な紫色のメッシュがかかった猫目の女性。
「あれ。貴女は…さっき町で、」
「会ったねぇ~。使い魔堂の場所を聞かれると思ったのに店の場所を聞かれたからビックリしちゃったw」
「え、ん?」
「君が使い魔堂を目指してるのは知ってたからさ。」
「ま、魔女はそーゆーの分かっちゃうんですか?」
「ん?君、ミズキだよね?」
「そ、…うです。」
「私はミューリウム」
「!?」
「待ってたよ。ミズキ。」
「な、え、あ、えあ、」
「あははww落ち着いて~」
「なんですぐ言ってくれなかったのさ!」
「言う前に捕獲猫の場所聞かれちゃったし、なんかテンパってたから今言うのも悪いなぁ~と思って」
「それはっ!だって、色々あったからっ!」
「うんうん。それ凄く聞きたい。ミズキが1人で初めて家を出て、何を見て来たのか…教えて?」

ある人からお腹に預かったのよ。
貴方はミューリウムと一心同体なの。

「俺は、君とどういう関係なのか、教えてほしい」
「そうだね。お互い知らない事が多い。ゆっくり話そう。」
ニコリと笑うミューリウムの笑顔はとても優しかった。
ミズキは照れるような、ホッとするような気持ちで、笑顔を返した。

「その前にミズキの使い魔錬成しないとなっ!」
「うん!」